5年以上にわたる次世代DVD戦争が,東芝 代表執行役社長の西田厚聰氏の決断をもって遂に終結した(Tech-On!関連記事)。2006年3月31日に同社が初めてHD DVDプレーヤーを発売してから2008年2月まで,東芝が出荷したHD DVD機器は約130万台だったという。

  • HD DVDプレーヤー 71万台(米国:60万台,欧州:10万台,日本:1万台)
  • HD DVDレコーダー 2万台(日本のみ)
  • HD DVD搭載パソコン 30万台(北米が14万台,欧州が13万台,日本が2万台)
  •  これまでTech-On!では,2006年2007年と,販売台数の推移などを中心に次世代DVD戦争の動向をまとめた。前回の総括からまだひと月半しか経過していないが,西田氏の決断に至る経緯を簡単にまとめてみたい。

     社長の西田氏は記者会見において,Warner社がHD DVD向けパッケージ・メディアを供給する契約を破棄し,Blu-ray Discへ鞍替えしたことへの悔しさを隠そうとしなかった。Warner社と東芝との契約は2008年1月時点ではまだ有効であり,この段階でのWarner社の離反はまさに「寝耳に水」だったという。

     Warner社の発表は,「2008 International CES」の前日というタイミングだったこともあり,米メディアに大きく取り上げられた。この結果,直後の2008年1月6~12日におけるHD DVDプレーヤーの販売台数は, 前週比88%減の1758台と大きく落ち込んでいる(Tech-On!関連記事)。東芝は打開策としてHD DVDプレーヤーの値下げを発表したが(Tech-On!関連記事),一度冷えた消費者の心理を取り戻すには至らなかった。

    BD陣営,Wal-Mart社対策も抜かりはなかった

     そしてHD DVDにとどめを刺したのが,2008年2月15日,米小売最大手のWal-Mart社が「HD DVDプレーヤーの扱いを2008年6月までに取り止める」と発表したことである。これまで東芝は,Wal-Mart社向けに99米ドルのHD DVDプレーヤーを販売するなど,Wal-Mart社に赤字覚悟の値付けで製品を供給することで,販売台数を稼いでいた。この大きな販路が閉じられたことで,HD DVD事業の終息は決定的となった。

     実はBlu-ray Disc陣営は,東芝のWal-Mart社への安売りに対抗する策を用意していた。Wal-Mart社と太いパイプを持つ船井電機と協力関係を結んだことである。

     船井電機は2008 International CESにおいて,Blu-ray Discプレーヤー「NB500シリーズ」を2008年第2四半期に発売することを明らかにした。店頭での予想価格は300米ドル。「2008年の年末商戦までには店頭価格が199米ドルまで下がるのでは」との声もあった。

     この船井電機のプレーヤーは,松下電器産業が開発した45nmプロセスのUniPhier LSI,およびソニーが開発したBlu-ray Disc用再生ヘッドを搭載したものである。安価な機器の開発で定評がある船井電機を先兵にBlu-ray Discプレーヤーの価格を引き下げ,東芝の値下げ戦略に対抗したいという同陣営の思惑が垣間見える。あるBlu-ray Disc陣営の幹部は,船井電機の参入によって「プレーヤーの競争については圧倒的に有利になると見込んでいた」と語る。Blu-ray Disc陣営はまさに「横綱相撲」で,2008年までに次世代DVD戦争に決着をつける見通しをつけていたわけだ。

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