私は,10年ほど前から,メインフレームの階層型データベースの管理や維持作業,運用支援を担当している。データベース設計を行う部署ではないが,私の周囲はみな階層型データベースのプロ揃いである。

 そんな私が,情報処理技術者試験が新制度になった2001年に,「テクニカルエンジニア(データベース)試験」を受験した。データベースの知識をより深めるためである。しかし,結局6回も受ける羽目になってしまった。

実務経験がないため,SQLの問題をパス

 4択の選択式問題が出題される午前試験は,毎回75%以上は取れていた。第一種情報処理技術者試験に合格していたこともあり,さほど苦労は感じなかった。

 敗因は,穴埋め問題が出題される午後I試験にあった。

 午後I試験は,4問中3問を選択して答える。4問の内訳は毎年,

(1)正規化理論の問題
(2)データベース設計の問題
(3)SQLの問題
(4)定番以外の問題

 となっている。正規化理論,データベース設計,SQLの3つが“定番”で,あと1問は毎回異なる内容が出題される。

 このうち,正規化理論とデータベース設計は,社内教育で結構マスターできた。しかし,SQLに関しては,ある程度マニュアルなどで勉強はしたものの,午前試験の4択問題はともかく,午後I試験の穴埋め問題が答えられるレベルにはなれそうもなかった。RDB(リレーショナル・データベース)とSQLについては,実務経験が皆無だったからだ。

 このため,午後I試験の定番の一つであるSQLの問題は外さざるを得なかった。つまり,毎回(1)正規化理論の問題,(2)データベース設計の問題,(4)定番以外の問題を選択していたのである。

 だが定番以外の問題は,毎回異なる内容が出題されるので,試験のたびに「出たとこ勝負」になる。得意な分野が出題されればいいが,苦手な問題が出題されたら,その時点で午後I試験はアウトだ。実際,2001年から2004年まで,自分が得意な分野が出題されることはなかった。これが,2001年から2004年まで不合格を連発した大きな原因だった。

 幸い2005年の午後I試験では,定番以外の問題が,たまたま得意な問題だったため,午後I試験は600点ちょっとで突破できた(600点以上で合格)。しかし,午後IIの論述式試験の点数は,自己採点よりもかなり低く,想像していたよりも模範解答から遠いことを実感した。午後I試験に関しても,定番以外の「そのほかの問題」で苦手な問題が出たら「一巻の終わり」であることに変わりはなかった。

過去問題さえ解けば午後試験は攻略できる

 危機感を持った私は,いつもより早く,2005年秋から2006年試験(試験日は4月16日)の準備にとりかかった。

 まず,午後I試験については,手元にある5年分の過去問題を,SQLの問題を除いて,すべて解いてみた。特に,苦手な分野の「定番以外の問題」は何度も解いた。

 この際に気をつけたのが,答えを実際に書いてみることである。頭で答えを思い浮かべるだけでは,重要なキーワードがもれていたりするからだ。

 午後II試験も,5年分の過去問題をすべて解き,弱点補強に力を入れた。午後II試験の学習には2時間は必要だが,家族が寝静まった後に学習したり,通勤電車で座席を確保できたときに学習することで,なんとか時間を捻出した。

 午前試験の学習には,午後I試験と午後II試験ほどは力を入れなかった。3年分ほどの過去問題を通勤電車の中で解いただけだ(計算問題でなければ,満員電車の中で立っていても解ける)。午前試験は75%も正解すれば楽に突破できる。「55問中13問は間違えてもよい」と思えば,気楽なものである。

 結局,2005年秋から2006年春までの半年間で,合計150時間以上をテクニカルエンジニア(データベース)試験の学習に費やした。そして迎えた試験当日。午後I試験までは「どうにかクリアできた」と思ったが,午後II試験は学習不足が露呈した。自信はなかったが,午前試験が600点代後半,午後I試験が750点余り,午後II試験が600点代前半で,辛くも滑り込みで合格することができた。

 テクニカルエンジニア(ネットワーク)試験やテクニカルエンジニア(情報セキュリティ)試験と異なり,テクニカルエンジニア(データベース)試験の問題には,新しい技術はほとんど出てこない。このため,私のように過去問題さえこなせば,午後試験にも対応できる。過去問題を解くだけで午後試験を攻略できる高度情報処理技術者試験(テクニカルエンジニアやプロジェクトマネージャなどの難度が高い情報処理技術者試験)は,恐らくテクニカルエンジニア(データベース)試験だけだろう。

 試験勉強のおかげで,SQLは知らなくても,データベースに関する知識は非常に幅広いものになった。今後は,テクニカルエンジニア(データベース)試験の受験を通じて身に付けた知識を,職場の若手にきちんと指導していきたいと思っている。

試験概要:テクニカルエンジニア(データベース)試験
情報処理技術者試験の一つ。2001年の制度改正により,従来の「データベーススペシャリスト」(1994年に開始)の後継として設けられた試験区分で,主に情報システム基盤の構築・運用に携わるデータベース技術者を対象としている。毎年4月第3日曜日に実施。2009年の制度改正で,出題形式などが変更され,名称も「データベーススペシャリスト」になる。

出井 美瑛(いでい よしひで)
1965年生まれ。大学卒業後,ソフトウエア企業に勤務。UNIX系のクライアント/サーバー・システムの構築や,運用支援を担当してきた。ここ10年くらいは,メインフレームの階層型データベースの管理や維持作業,運用支援を担当している。最近,新しいハードウエアによる新システムへの移行を終えたところで,新システムでも旧システムと同様の作業を担当している。保有資格は,第二種情報処理技術者,第一種情報処理技術者,テクニカルエンジニア(データベース)など。