NTT東日本/西日本のNGNサービス開始まで約1カ月に迫った。あらためて「NGNとはなにか」を考えてみたい。NGNはNext Generation Networkの略。しかし,「なにが次世代なのだろう」「インターネットとどれほどの違いがあるのか」と考えてしまう。同じような疑問を抱く人は少なくない。

 それ以前にNGNの認知度は低い。ITproがWebサイト上で2007年11月~12月に実施した調査の結果,「詳しい内容まで知っている」と「大体の内容は知っている」を合わせても35.7%に過ぎない()。ITproにアクセスするような人を対象にした調査でこの結果である。もっと対象を広げて調査したら,「聞いたこともない」人が大半であろう。

図●NGNの認知度(有効回答数:1950)

 認知度が低いのは,NTT自身が一般に向けて宣伝しているわけではないから当然なのだろう。提供地域が2008年3月のサービス開始時点で首都圏の一部と大阪府の一部とかなり限定的。2008年度中に政令指定都市や県庁所在地まで広げる予定であるが,そのなかでも利用できる地域は限られる。すぐに使えないサービスを一般向けに宣伝しても仕方がない。

 もっともそのときがきたとき,NGNをどのように一般の人に伝えるのかが興味深い。「高速である」「信頼性が高い」「セキュリティが高い」「IP電話で使われているSIP(Session Initiation Protocol)を採用」などといってもピンと来ない。かといってBフレッツの代名詞のように使っている「光」をアピールしてもわかりにくい。それに,「NGN=FTTH」ではない。

 高速化や信頼性の向上は,NGNでなくてもフレッツでも可能なはず。確かにNGNの回線認証などのセキュリティはインターネットでは不可能であるが,代替手段はある。SIPを使うかどうかは,エンドユーザーにとってはあまり意味がない。やはり,次世代と銘打つにしては寂しい。それにこういったメリットは,通信する双方がNGNを利用していないと享受できない場合が多い。

 唯一明らかな違いとして,インタフェースを規定し,それを公開するという点がある。そのインタフェースには,UNI(User to Network Interface)とNNI(Network to Network Interface),ANI(Application to Network Interface)がある。とくにSaaS(Software as a Service)が拡大するとして,ANIに対する期待は大きい。しかし,こういったインタフェースを活用し,その効果が見えるのには時間がかかるだろう。

NTTにとっては“次世代”

 NTTにとっては,間違いなくNGNは次世代ネットワークである。クロスバー交換機からデジタル交換機へと,NTTの事業の大黒柱である電話網を支えてきた交換機を一掃して,IPベースのネットワークに作り変えようというのだから。IPネットワークに統合することで,運用管理の効率化を図り,コストを削減するとともに,ネットワークの柔軟性やサービスの多様化が容易になる可能性が高い。

 やはり,NGNは事業者の内部の話と考えたほうがいいのかもしれない。ユーザーは現行サービスを利用していても,いつの間にかNGNに接続していた,となる。そのなかで,高速化が進み,信頼性やセキュリティが向上していく。

 ISDNのときもそうだったように,新しいネットワークの“意味”が見えるのには時間がかかる。現時点では思いも及ばない活用方法が出てくることに期待しながら,見守っていきたい。