経済産業省の「中小企業等CO2排出量削減制度」、いわゆる「国内CDM(クリーン開発メカニズム)」制度の骨子がまとまった。発行される国内排出権は自主行動計画の目標達成のほか、温対法や省エネ法で使えそうだ。

 経産省は今年度から、大手企業が中小企業の温暖化ガス削減を資金面や技術面で支援する見返りに、日本独自の国内排出権を取得できる制度の検討を進めてきた。いわゆる「国内CDM」制度の骨子が、2007年12月6日にまとまった。

 制度の対象になるのは、日本経済団体連合会などによる自主行動計画に参加する大手企業が、他企業の省エネやCO2削減を、技術や資金の面から支援するケース。この制度は企業同士が自主的に活用するもので、実施が義務づけられる制度ではない。

 例えば、工場でボイラー燃料を重油から天然ガスに転換したり、ビルに高効率給湯器を導入するなどの事業がこの制度の対象になり得る。

 こうした事業に対し大手企業が設備投資や技術支援をすると、CO2削減量や省エネルギー量に応じた「国内排出権」が発行される。大手企業は国内排出権を、自社がかかわる国内の温暖化対策制度に活用できるようになる見通しだ。

図●国内排出権のイメージ
図●国内排出権のイメージ
国内CDMの対象になるのは、大手は自主行動計画の参加企業、実際にCO2削減や省エネをするのは自主行動計画に参加しない中小企業が中心。大手同士がコンビナートなどで余剰の熱を融通し合うケースも対象として認める。
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 経産省の骨子によると、省エネやCO2削減を実際に進める事業所は、!)自主行動計画に参加していない中小企業が中心だが、!)自主行動計画に参加する大手企業でもよい。

 ただ、!)と!)では、発行される国内排出権を活用できる範囲が異なる。

 !)であれば国内排出権が、大手企業が加盟する業界団体による自主行動計画の達成に使えるようになる。

 これに加え、地球温暖化対策推進法で求められる温暖化ガス排出量の「算定・報告・公表制度」や、省エネ法によるエネルギー消費量の「定期報告制度」上の報告の際、大手企業のCO2排出量やエネルギー消費量から国内排出権に相当する量を「控除」できるようになりそうだ。

 ところが!)の場合、自主行動計画の目標達成には使えない。ただ、算定・報告・公表制度と省エネ法では、!)と同様に使える見込みである。

 経産省は今春の京都議定書目標達成計画の改訂や温対法・省エネ法改正を通して制度整備を進め、「2008年後半から2009年の本格開始を目指す」(経産省)という。

 国内排出権の活用範囲が定義される中で、京都議定書が認めるCDMなどの排出権も影響を受けそうだ。

 日本では電力や鉄鋼などがCDM排出権の獲得を進めてきた。現在の制度上、CDM排出権は、自主行動計画の達成には使えるが省エネ法では使えず、算定・報告・公表制度では別紙に自主取り組みとして任意で記載できるものの控除はできなかった。

 経産省は「CDM排出権も温対法に反映できる仕組みを構築したい」としており、算定・報告・公表制度上は国内排出権とCDM排出権を同等に使えるようになりそうだ。

 加えて、電力会社個別のCO2排出係数から各社が獲得したCDM排出権の控除も実現しそうである。一般の同制度の対象事業者が自社のCO2排出係数を算定する際、電力の排出権獲得量に応じた、小さな値の排出係数で計算できるようになる。国内CDMに関与しない事業者でも、メリットのある仕組みが整いそうだ。