総務省による電波利用料見直しの作業が大詰めに入っている。電波利用料は3年ごとに見直すことになっており,現在進められている作業は2008~2010年度の3年間が対象となる。2007年7月の研究会の報告を受けて総務省は2007年12月に,料額算定の具体化方針案を示した。2008年1月には,提出された意見と総務省の考え方が示された。現在は法案化に向けた作業を進めており,2月中にもまとまる見込みだ。


携帯電話端末は4分の3以上の減額へ

 電波利用料は,期間中の3年間に必要と見込まれる平均電波利用共益費用(歳出額)を想定して,同期間内に見込まれる無線局で分担しようというものである。歳出額の総額が増えると,無線局個々の負担は大きくなる。歳出額は2007年度の約650億円に対し,2008年度の政府原案では674億円であり,総務省は「3年間の平均歳出額は大きく変動しないだろう」としている。

 電波利用料の体系は大きく,電波の経済的価値に応じて金額を決める「a群」と,恒常的な電波関連業務の費用を無線局で均等に負担する「b群」に分かれる。b群については,無線局の多数を占める携帯電話機からの収入が大半を占める。今回の見直しでは,地上波放送のアナログ周波数対策業務の一部がa群に回るなどしたため,b群の歳出額は2007年度の約450億円に対し,2008年度の政府原案では300億円程度と大幅に削減されている。この結果,単純に割り算しても携帯電話機1台当たりの電波利用料は4分の3程度になる。「無線局数の総数も増えている」(総務省)ことから,それ以上の減額となる見込みである。

 アナログ周波数対策業務については,放送業各社や関連団体から「b群のままとすべき」,ソフトバンクモバイルから「すべてa群とすべき」という意見が出ていた。総務省は「本来はa群」という考えを明確に示している。ただし2010年度までは地上波放送のデジタル化で空く周波数が利用できないことから「案分した」としている。


広域専用電波の負担は大幅増に

 a群の歳出額については2007年度の約200億円から2008年度の政府原案の約370億円へと大幅に増額になった。a群の費用分担については,主に移動・放送用途で利用する3GHz以下の周波数と,固定・衛星系で利用の多い3G~6GHzの二つの周波数グループに分けて負担の比率が決められる。総務省は2007年12月の具体化方針の中で,この比率の大幅な見直しを打ち出した。2005~2007年度における「3対1」から,「8対1」へ変更する。この結果,3GHz以下の無線システムの負担が2倍以上へと大幅に増加することになる。

 元々の比率である3対1は,各周波数グループの中央値(1.5GHzと4.5GHz)の逆数をとった値である。これに対して,今回は,「延べ利用周波数帯域幅」(同時に発射できる周波数の帯域幅の合計)という概念を持ってきた。延べ利用周波数帯域幅が逼迫(ひっぱく)度合い,すなわち経済的価値を表すという考えである。

 一方ソフトバンクモバイルは,「延べ利用周波数帯域幅という概念に基づくと,電波有効利用の常道である小セル化を推進すると値が大きくなって電波有効利用のインセンティブが働かなくなる」と主張した。電波有効利用のインセンティブについて総務省は,「広域専用電波」(携帯電話など一定の周波数を広域において専用する無線システムについて,局数ではなく使用する帯域幅に応じた課金体系を採用)という制度を設けている。あくまで経済的価値を図る指標として有効としており,方針を変える考えはないという。この結果,携帯電話事業者などが対象となる広域専用電波の負担額の大幅な増額は避けられない見込みだ。

 今回の見直しでは「地上波テレビ放送に対する特例措置の廃止」や,「国や独立行政法人,国立大学法人も非常時対策など一部を除き,徴収の対象とする」などの方針を打ち出している。地上波テレビ放送はこれまで6MHz幅で算出していたものを,370MHzで算出する。ただしラジオ放送と同様に4分の1となる特定係数がかかっている。そのうえ,「経過措置的な手段」をとる方針だ。経過措置がなければ50億円強程度(いわゆるアナログ-アナログ変換対策にかかる暫定追加電波料の約30億円を含む)になると見込まれるが,段階的な増額となる。同じ「3GHz未満の周波数」に区分される携帯電話事業者からみれば,「まだ優遇されている」という印象となりそうだ。