記者:「Windows Server 2008の仮想化機構Hyper-Vって,どうですか?」
取材先:「うん,結構使われるんじゃないかな」
記者:「でも,仮想化ソフト市場ではVMwareが圧倒的に強いですよね」
取材先:「まぁそうだけど,サーバーにプリインストールされるからねぇ…」

 「サーバー仮想化」をテーマにした取材や寄稿の打ち合わせをするとき,最後に「Hyper-Vって,どうですか?」という質問をすることにしている。すると,上記のようなやり取りになることが少なくない。「Hyper-V」とは,Windows Server 2008に搭載されるサーバー仮想化機構で,Windows Server 2008(3月発売)の出荷後180日以内に製品版がリリースされる。まだ半年くらい先になるので,なんとも気の早い話だが,仮想化やサーバー関連のお仕事をしている方々の間では,2008年の重要なトピックになっている。

 サーバー仮想化ソフトは,サーバー統合やこれからのシステム基盤に不可欠な要素とされ,注目されている。それゆえ,どの仮想化ソフトが主流になるか,という興味が尽きない。現時点では,「VMwareの牙城に,Hyper-Vがどれだけ食い込めるか」という点に関心が集まっているようだ。サーバー仮想化市場を作り出し,管理ツールなども含めた製品ラインが充実しているVMwareの優勢は明らかだが,マイクロソフトもこの状況に甘んじているはずがない。

 ちなみに,ITpro読者を対象に昨年末実施したアンケートで,「VMwareとHyper-Vと,どちらに興味がありますか?」という,これまた気の早い質問をしてみた。結果は,VMwareとの回答が37%,Hyper-Vが14%と大きな差がついた。ただし,「現時点では評価できない」「わからない」という回答も合計で47%あるため,この層がどう動くかで仮想化ソフト市場の行方も大きく変わるだろう。

仮想化ソフトが標準搭載される時代に

 さて,話を冒頭のやり取りに戻すと,「Hyper-Vが結構使われるのではないか」とする予想の根拠の1つは,Windows Server 2008と一緒にサーバーにプリインストールされて出荷される可能性が高いことだ。サーバーの購入者がそれを選択しないケースもあるだろうが,Hyper-Vのプリインストールを選択する可能性のほうが高いとみている。

 しかも,仮想化ソフトのアーキテクチャの違いから,VMwareとHyper-Vでは動作保証されるハードウエアの数に大きな差がある。VMwareは専用のデバイス・ドライバが必要なので対応ハードウエアに限りがあるが,Hyper-VはWindows Server 2008が対応しているハードウエアなら何でもOKである。ミドルレンジ以下のサーバーではHyper-Vが優勢かもしれない。

 一方のVMwareも,サーバーへのプリインストールを狙っている。こちらは,32Mバイトのサイズにコンパクト化したVMware ESX Server 3iをフラッシュ・メモリーに書き込み,それをサーバーに内蔵してしまう。この3月にはNECから,VMware ESX Server 3i内蔵のブレード・サーバーやラックマウント型サーバーが出荷される予定だ。昨年11月にこの製品のデモを見る機会があったが,非常に便利な印象だった。

 例えば既存のブレード・サーバーの処理能力を増やすために,新規のブレードを購入したとしよう。管理者がそのブレードをサーバー・シャシーに挿入すると,自動的にVMwareが起動する。初期設定画面で管理者アカウントやネットワークに関する簡単な入力を済ませば,もう準備完了だ。あとはVMwareの管理コンソールから仮想マシンの移動あるいは起動を指示すれば,業務アプリケーションが動き出す。

 ここでは2つの仮想化ソフトの1面だけを比べたが,管理機能やライセンス料など,ほかにもいろいろ比較するポイントがある。そして,どちらにも,それぞれの魅力がある。

 サーバーの仮想化を検討しているユーザーは,多かれ少なかれ選択に悩むに違いない。1つだけ確実に言えるのは,「仮想化ソフトがサーバーに標準搭載される時代が,もうすぐやって来る」ということだ。