インターネットイニシアティブ(IIJ)が法人向けモバイル事業に乗り出した。NTTドコモの設備を借り,HSDPA(high speed downlink packet access)を使ったデータ通信サービス「IIJモバイル」を1月21日に開始した。モバイル・サービスを自ら手がけることで,企業ネットの構築・運用をワンストップで提供する。

 IIJがMVNO(仮想移動体通信事業者)として法人向けモバイル市場に参入した。NTTドコモのFOMA網とIIJのバックボーンを接続し,IIJが独自ブランドでサービスを展開する。「自社のWANサービスとの連携,セキュリティやデータ・センターを組み合わせた付加価値サービスの提供など,モバイル・ブロードバンドを活用したソリューションを包括的に提供していく」(営業本部の丸山孝一副本部長)。音声サービスの提供は考えていないという。

プロトコル制限や料金プランに違い

 IIJモバイルは下り最大3.6Mビット/秒のインターネット接続が定額料金で使い放題になるサービスである。

 NTTドコモの同様のサービスと比較した場合,料金と利用できるプロトコルの点でIIJモバイルにメリットがある。NTTドコモは2段階の定額制で上限が1万500円。利用プロトコルも限られる。例えばストリーミングによる動画閲覧などに制限がある。一方,IIJモバイルは月額8925円の完全定額制で,プロトコルによる利用制限は一切ない。

 IIJモバイルには定額以外のプランもある。ユーザーの利用形態に応じて従量制や同時接続数で課金する(図1)。(1)基本料が月額1890円/回線で,パケット通信量に応じて従量課金する「パケットシェアプラン」,(2)基本料が月額4095円/回線で,同時接続数に応じて固定額を追加徴収する「接続シェアプラン」である。(1)のパケット通信量は企業全体の利用分でカウントする仕組みで,データ通信量の少ない企業に向く。(2)は同時利用ユーザーが少ない企業向けである。(1)の従量課金と(2)の固定額の料金は個別見積もりとなる。

図1●インターネットイニシアティブ(IIJ)の法人向けデータ通信サービス「IIJモバイル」
図1●インターネットイニシアティブ(IIJ)の法人向けデータ通信サービス「IIJモバイル」
MVNO(仮想移動体通信事業者)としてNTTドコモから無線設備を借りることで実現した。ユーザーはHSDPAを利用して下り最大3.6Mビット/秒でインターネットに接続できる。NTTドコモが提供するパケット定額プランと異なり,利用できるプロトコルに制限はない。
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 企業利用を想定したオプションも充実させた。特定範囲のIPアドレスを固定的に割り当てる「接続元限定オプション」,インターネット接続の禁止など通信先を制限できる「接続先限定オプション」,社内へのリモート・アクセス時に認証や通信制御の機能を提供する「リモートアクセスVPNオプション」,海外で利用できる「国際ローミングオプション」の4種類を用意する。

 データ通信カードはNTTドコモからIIJが調達してレンタル提供する。レンタル料金は非公表である。