NTT東西が年度内にNGNを始めるために必要とされる手続きに,思わぬ“落とし穴”があった。総務省は2月下旬にも,NTT東西がNGNを使って県間通信を行う「活用業務」を認可する。だが活用業務ガイドラインと一体で運用される,NGNの相互接続ルール整備は3月末までに間に合わず,制度上の不整合が生じるのだ。

 NTT東西地域会社が金看板として掲げてきた「2007年度中にNGN(次世代ネットワーク)の商用化」に,制度上の裏付けが取れない可能性があることが明らかになった。

 総務省は,NTT東西がNGNを使った商用サービスを開始するうえで必要となる「活用業務」の認可について審議を進めている。1月15日に公表した「方針案」では,公正競争を確保するための八つの条件をクリアすれば認可するという基本方針を示した。

 このまま順調に手続きが進めば,2月下旬までに正式に認可が下りる見通しだ。NTT東西は2007年10月に認可を申請したが,それは総務省が活用業務の審査にかける「標準処理期間」として定めた“申請から4カ月以内”を視野に入れたものだった。

接続ルール未整備では“実効性なし”

 ところがここへ来て,活用業務の認可だけでは,NTT東西がNGNを始めるうえでの制度上の手続きが不十分であるという事実が浮上した。「NGN網の相互接続ルール」の整備が,NGNの商用化を制度的に認めるために不可欠なパーツになっているからだ。

 総務省は「活用業務と接続ルールは,公平な競争環境を確保するために相互補完の関係にあり,一体で運用することが前提」という。つまり,活用業務が認可されても,その認可が正式に効力を持つのは,接続ルールが整備された後になるわけだ。

 NGNの接続ルールは,1月29日に情報通信審議会の答申案が公表され,意見を募集している段階にある。この内容は,募集した意見を踏まえて3月下旬に正式に答申される見通しだ。しかし,答申された制度を正式に運用するには,答申に従って,総務省が関連する省令や告示を改正しなくてはならない。これを待つとすると,NGNを年度内に開始できないのである(図1)。

図1●NGN開始までに必要な制度整備
図1●NGN開始までに必要な制度整備
活用業務は2月中に認可が出る見通しだが,一体となって運用される「接続ルール」は年度を超えても改正ルールの運用が始まらない見通しのため,何らかの措置が必要となる。
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暫定接続料を認める特例措置が必要

 この問題に対して総務省は,NTT東西の事業計画に一定の理解を示し,政治的判断を下す準備を進めている。具体的には,暫定的なNGNの接続料を特例措置として認めることで,活用業務が有効となるよう調整を進めているのだ。

 総務省令の接続料規則の第3条には,「特別許可に基づく接続料設定」が規定されている。この条項によれば,「特別な理由がある場合には,総務大臣の許可を受けて省令の規定によらない接続料を規定することが可能」とされている。今回の措置ではこの条項を使うものと予想される。

 この場合,まずNGNに稼働実績がないことを「特別な理由」として一時的な料金設定を認める。その後,商用サービス開始から一定期間を経て通信量の状況や,他の事業者からの要望などを拾い上げて,将来原価方式による正式な接続料を導入するという算段が描かれているようだ。