セブン銀行のCIOに相当する池田俊明・取締役常務執行役員システム部長
セブン銀行のCIOに相当する池田俊明・取締役常務執行役員システム部長(CIO)

 「セブン-イレブン・ジャパン出身の社員や、セブン-イレブンのIT(情報技術)パートナーと一緒に仕事をすることで、大きなカルチャーショックを受けた」。セブン-イレブンの店舗を中心にATM(現金自動預け払い機)を設置して運営するセブン銀行で、CIO(最高情報責任者)に相当する池田俊明・取締役常務執行役員システム部長は、こう打ち明ける。

 セブン-イレブンは、ATMを1カ月に数百台のペースで設置していく計画を当然のように立てて実行してきた。だが、旧・三和銀行出身の池田取締役にとって、それは三和銀行時代では考えられなかったスピードだという。

 もともと店舗数が1万を超えるセブン-イレブンのPOS(販売時点情報管理)レジを1年ほどで新型機に刷新していくスピードが同社の常識である。しかも店舗は24時間365日休まず営業しており、店舗が開いている最中に端末を短時間で入れ替えていくのはお手のものだ。

 池田取締役が驚いたのはこうしたスピード感だけではなく、スピードを出すためにパートナー企業をフル活用するという発想そのものだったという。

 セブン銀行の社員はわずか300人足らずだ。それだけの人数で、全国に約1万3000台設置したATMや、ATMと提携金融機関を結ぶ独自の中継システムやネットワークを開発・運用していかなければならない。到底、自前の力だけでこなせるシステム規模ではない。初めからパートナー企業の協力ありきでシステム構築や運用を考える。

 逆にいえば、セブン銀行は、外部のパートナーの力をうまく引き出すことで、経営のスピードを上げていくことができるわけだ。「システム開発を指揮する私自身がまず最初に、システム開発や運用の概念をこれまでと大きく変えなければならなかった。三和時代の常識は通用しない」と池田取締役は語る。

Profile of CIO

◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・社長の安斎隆は、出身の日本銀行で電算情報局長を務めていた経歴があります。その経験から社長は情報システムの本質を理解していますので、新機能を追加する場合などは、私は「なぜその機能が必要なのか?」「システム的には、どうなっているのか?」といった本質を社長に伝えるように努めています。

 社長は技術に対し、「こちらが要求し続ければ、相手は必ず実現してくれる」という信念を持っており、私たちシステム部にも同じように要求し続けますので、できることとできないこと、やるべきこととやるべきではないことを、素直に本音でぶつけるようにしています。

◆ITベンダーに対して強く要望したいこと、IT業界への不満など
・セブン銀行は創業からわずか7年で、業容が急拡大してきました。そんな私たちの要望や要求は常に新しいものであり、かつ質とスピードが求められています。私たちはITベンダーに対し、当社の「パートナー」として、上流部分からの関与をお願いしています。創業当初から当社の事業に参画いただいている人たちは、いまだに当社のプロジェクトを「我がプロジェクト」と呼び、我々と同じように熱い思いを抱いて当社の案件の開発にまい進いただいており、心から感謝しています。

 お客様のニーズも変化しますが、それと同じように技術も進歩しています。新しい提案と新しい技術の動向も教えていただきたいと思っています。システム開発は1つひとつ積み重ねていく仕事がベースになりますが、お客様のニーズを新しい技術で実現していくような創造的な仕事もあります。

 幸い当社には素晴らしいビジネスチャンスがありますので、現在のパートナー企業にも、そして今後パートナーになっていただく企業にも、私たちと同じ目線でビジネスの成功に向けて歩んでいただけたらと思います。

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・日本経済新聞
・朝日新聞
・週刊東洋経済

◆お勧めの本
・『スペンサーシリーズ』(早川書房、ロバート・B・パーカー著)
・『鬼平犯科帳』(文藝春秋、池波正太郎著)
 私は食い意地がはっているので、両シリーズともにストーリーもさることながら、食べ物へのこだわりが強いのがうれしいです

◆仕事に役立つお勧めのインターネットサイト
・当社の「みんなのマネーサイト。」
・記事検索サイト。ニュースはよく見ています。必要な時に最新の情報がほしいわけです
・メールマガジンはあまり読んでいません

◆情報収集のために参加している勉強会やセミナー・学会など
・定期的に参加しているものはありません。日経グループやIT企業などが主催しているセミナーで興味深いものがあれば参加しています。当社のパートナー企業との定例ミーティングは「勉強会」のようなものとも言えるかもしれません。互いにスピーディーに変化対応していくために、情報交換しています

◆ストレス解消法
・オンとオフの切り替え、気分転換の機会を積極的に作って、リフレッシュしています。
・身近なところでは、通勤時にはいつもiPodでクラシック音楽を中心に聴いています
・会社ではフットサルチームを率いています。老若男女40人程が所属し、仕事の後にみんなで気持ちのいい汗を流しています
・週末はゴルフや観劇といったところでしょうか