前回に続き、工程進捗の実態把握を取り上げる。定量的、客観的に実態を把握できる仕掛けを作り、実態が素直に報告されるオープンな環境や雰囲気を作り、愚直にかつ全感覚を動員してファクトをつかむ必要がある。

162日目●漸進も後退よりは前進だ

 工程、特に初期工程は絶対遅らせない覚悟が大事である。だからといって不十分な設計で先を急ぐのはもっと悪い。雑な基本設計だと、後で問題が発見されたとき、基本設計までさかのぼって再設計せざるを得ないような不幸な事態に追い込まれてしまうからだ。

 最近は短納期が増え、工程を優先するあまり、いい加減な設計で先を急ぐ例が散見されることは残念なことだ。たとえ漸進であっても着実に進め、決して後退しないことが全体の工程を守る鍵である。要求された業務が一通り動くと、全部できたと考え、急いで稼働させてしまうようなことでは、事故が頻発し顧客に大変な迷惑をかけることになる。特にエラー処理、例外処理については、緻密で地道なテストが必要である。



163日目●追い込めば我慢できずに嘘が出る

 「工程会議において、工程の遅れに対し厳しい非難を受けたあと、次の工程会議でも『まだ回復できないのか』と叱責を受けると、3度目の工程会議では、依然遅れていたとしても、『オンスケです』と必ず嘘をつくものだ」という話を聞いたことがある。

 基本的に上司や周りが遅延対策をやってくれることはなく、「どうせ自分自身が頑張らざるを得ないのなら、しかられるばかりでは損だから適当に報告しておいて、そのうち何とかしよう」といった気分になってしまうのだ。

 それだけに工程管理責任者は、真実が素直に出てくるような雰囲気を作りださないと、せっかくの工程会議の意味がなくなってしまうことを認識しておかなければならない。

 いつも素直に実態が報告され、参加者が色々な視点から対策案を出し合う雰囲気が出てくれば、本当に役に立つ工程会議になるであろう。



164日目●工程に遅れ進みはあるがよし

 工程管理は工程の進捗の実態をいかに的確に把握するかが鍵である。各作業の進捗が全部そろって「スケジュールどおりである」と報告されることは、むしろおかしい。進んだ部分があり、遅れた部分があるからこそ、遅れていることがより明確になるのである。明確になれば、その遅れが妥当なものか、遅れている原因は何なのか、の追求にも役立つはずだ。進んでいる部分が、“あるべき”ひな型を示してくれているので、対策を立てやすいというメリットもある。

 進んだグループに遅れているグループを応援させ“皆で遅れれば怖くない”状況にするやり方は、本質的な解決を遅らせる。ただ、遅れている仕事がクリテイカルパスに存在し、そこに手を入れない限り全プロジェクトが待ち状態になってしまうなら話は別で、遅れた部分に手を出すことは当然必要である。



165日目●書き直しすれば工程常にオンスケ

 工程が遅延してくると、その対策として、新たに工程表を書き直してくるマネジャーに工程会議ではよく出会う。しかし、書き直せばその瞬間は“オンスケジュール”ということになってしまい、工程が遅れてきた実態が分からなくなり危機感も薄くなる。工程表の書き直しは極力やめるべきだ。

 もちろん当初書いた工程表に矛盾が出てきたら書き直さざるを得ないこともあろうが、書き直さなくてもいいように最初からきちんとした工程設計が必要である。工程会議は工程計画を守るために開いている会議ではあるが、それ以上に、遅れを正確にとらえるためにあることをしっかり認識したい。