システム設計では、業務機能の実現以外に考えておくべきことがいくつもある。特に、使いやすい、事故の少ないシステムを実現するためには、システム関係者や利用者など様々な視点からシステムのあり方を多角的に考えておく必要がある。

141日目●少しでも操作・運用ミス防げ

 「オペレータや運用者は必ずミスをする」という前提で設計をしなければならないが、ミスが極力発生しないような工夫もまた必要である。その第1は、適切な操作ガイドである。少なくとも、システム内では統一された形で操作がガイドされるよう、設計当初から各プログラム間で統一基準を定めておく必要がある。

 第2は極力自動化し、オペレータの介入を減らすことである。 汎用的に作られたシステムは、オペレータが動かしたい機能をそのつど選ぶ例が多いが、システム稼働後はオペレータの介入を最小限に抑えておきたい。

 第3は、オペレータに対しシステムが何をしているのかがよく分かるように、システムの状態を表示することである。例えば、端末から見たシステムのステータス認識と、実際のシステム・ステータスが常に一致していることが、異常時にオペレータが適切な処置をとるための基本条件である。



142日目●やり直し再確認で事故減らせ

 オペレータがミスに気付いたら、すぐに修正ができるような仕掛けを考えておきたい。そのためには、操作前の値や状態を保存しておく必要があるため、どこまでのやり直しを許せばいいかをよく検討しておく必要がある。

 しかし、株の売買システムなどでは、間違った売りの要求を取り消そうとしても、修正入力の前に買い手が付いてしまえば取り消しはできないだけに、値が入力されてもすぐには実行せず、その入力が正しいかどうかを入力者に再確認する方式を採る必要がある。ただ確認といっても、毎日大量に入力している専任者は、めったに入力ミスをしないので、毎回「OK」だと回答することになる。まれに間違っても、いつもの癖で「OK」と返事しかねないだけに、確認の仕方やメッセージの出し方を工夫しなければならない。



143日目●パソコンに慣れた操作に気を付けて

 かってのシステム・オペレータは、システム専用の操作マニュアルに従って端末や制御盤を操作していたし、それが義務的に守られていた。しかし今は、だれもがパソコンの多様な操作に馴染んでいるだけに注意が必要だ。

 パソコンは多数のさまざまな人が使えるよう機能が豊富であり、かつ同じ目的を達成するにもさまざまな操作手順が許されていることが多いので、利用者は決められたとおりに操作するより試行錯誤的に操作する傾向がある。それだけに、パソコンの操作に慣れたオペレータは、設計者の思いもよらぬ操作をするものと考えて、想定外の操作をされてもシステムがおかしくならないようにするか、限定された操作しかできないように設計しておく必要がある。



144日目●ガイダンスすればよいとは限らない

 自動販売機やATM(現金自動預け払い機)のように、めったに使わない利用者であっても何とか機械を操作できるようにするには、丁寧なガイダンスがどうしても必要になる。しかし毎日窓口で顧客相手に端末を操作している人にすれば、特殊な例を除けば、1カ月もたてば完全に操作を覚えてしまうので、たちまち操作ガイダンスは不要になる。

 使いやすさを目指すガイダンスといっても、特定者が使うのか不特定者が使うのか、どんなレベルの人が使うのか、使う頻度はどの程度なのかを考え、よく議論してかからないと、的外れな設計になってしまう。

 凡愚主義、超平等主義による設計をすると、だれでも使えるが、多くの専任操作者にとっては極めて非効率で使い難いシステムや機器になってしまうことに注目すべきである。

 操作者が限られているならば、操作者に事前に訓練の場を提供してから使ってもらうほうが、使いやすく効率的なシステムを実現できるはずだ。