Forrester Research, Inc.
シャーリーン・リー バイスプレジデント
エレミア・オウヤン シニアアナリスト
ピーター・キム シニアアナリスト

 ソーシャル・コンピューティングを展望するときに常に言えるのは,新しい技術を適用した人々のつながりに変化が生じ,同時に顧客に対する企業のマーケティングや販売活動が変わることだ。フォレスターは,2008年に以下のような変化が起こるとみる。

 第1に,企業ユーザーの参加によって,ソーシャル・アプリケーションが主流になる。ウォルマート・ストアーズの「フログ(一般人のふりをした関係者のブログ)」の失態で,企業はソーシャルWebに慎重になったが,一方で「Facebook」のビクトリアズ・シークレットのページやP&Gの「being girl.com」のおかげで,成熟したイニシアティブを確立しつつある。スポンサー付きコミュニティやYouTubeのビデオ投稿,ソーシャル・ネットワーキングのグループ,ウィジェットが,オンライン・マーケティングの標準要素になる。企業はソーシャル・メディアをマーケティング活動に取り込むよう内部プロセスを整えるべきだ。

 第2に,多くの企業でコミュニティ責任者の役割が増す。ソーシャル・アプリケーションの重要性が浸透し,多くの企業がごく当たり前に予算化して利用する。担当者は,ソーシャル・テクノロジの戦略立案やツール適用の役割を担う。戦略の実践にふさわしい人材を社内で見つけてほしい。外部から雇う場合は,ブログなど目に見える活動を見て選ぶのがいい。既存のリクルータにはこうしたスキルがないので,自ら土台を築く必要がある。

 第3に,企業の社会的責任が新しい意味を持つようになる。企業の情報提供に関する消費者の主張が大きくなる。例えば昨年,Facebookのコミュニティはプライバシー保護のために,2度にわたりユーザーの行動を配信する機能「News Feed」や「Beacon」を変えるように求めた。SOX法は企業の内部統制のためのガイドラインだが,社外のコミュニティについても同様の答えを見いだす必要がある。企業はプライバシーに関するポリシーを,ソーシャル・メディア時代に合わせて書き換える必要がある。

 第4に,顧客の要求を顕在化する「デマンド・プラットフォーム」の試作品が登場する。今後は,サービスや製品を買うかどうか,顧客がWebを通じて意思表明する。こうした入札ベースの市場に移ると,eベイの「Want It Now」が爆発的成長を遂げるだろう。一方,Googleなど検索エンジンは,顧客と企業の両方の要求に合ったVRM(ベンダー関係管理)の試作ツールを提供する。企業担当者は,買い手のグループを注視,支援すべきだ。製品サービス開発部門の活性化にもなる。

 第5には,TwitterやPowceなどユーザー間で短文やオーディオ・クリップを共有できるマイクロメディアが増加し,マーケティング担当者は参加の仕方を学ぶようになる。検索エンジンやアグリゲーション・ツールは,こうしたマイクロメディアを関連付けて実用的にする。参加するには時間と労力がかかるが,得るものは大きい。今のうちに微妙な感覚や作法を学ぶべきだ。

 第6に,「ソーシャル・グラフ」が立ち上がる。2008年には,ソーシャル・ネットワークの会員がFacebookやLinkdInなどの複数のサイトの壁を越えて自分のプロファイルをコントロールできるようになる。おそらく,マイクロソフトやヤフーは,Webベースのアドレス帳やインスタント・メッセンジャーのリストから関係図を作り上げ,部外者がアプリケーション開発時に使えるようにする。これが標準的になり,他社も追随するだろう。

 最後に,ソーシャル検索が登場する。ソーシャル・グラフの検索パターンや検索履歴に応じて,検索時のランキング順が変えられる。結果として検索エンジン向けの最適化(SEO)は影響力がなくなる。マーケティング担当者は,ターゲットとする個人の要求に合致するよう注力する必要がある。