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無線ブロードバンドの核心

モバイルWiMAX(1)世界規模の供給体制で史上最大のデファクトを目指す

2008/03/03 日経コミュニケーション

 ADSLやFTTHをはじめ,高速なブロードバンドを安く利用できるようになった。モバイル環境でのデータ通信も第3.5世代携帯電話(3.5G)と呼ばれるHSDPAHSUPAに移行しつつあり,高速化が進んでいる。こうした中,高速無線ブロードバンドの新たな選択肢としてモバイルWiMAXが浮上してきた。

 日本では2.5GHz帯周波数でモバイルWiMAXを利用でき,ワイヤレスブロードバンド企画が免許(特定基地局の開設計画の認定)を取得している。ワイヤレスブロードバンド企画はKDDIを筆頭株主に,インテル・キャピタル,東日本旅客鉄道(JR東日本),京セラなどが出資する会社で,モバイルWiMAXを利用した高速無線ブロードバンド・サービスを2009年夏ごろ(試験サービスは2009年2月)に開始する予定である。

 2.5GHz帯には,全国で使える「移動系全国バンド」と市町村など行政区域単位で割り当てる「固定系地域バンド」の2種類がある。ワイヤレスブロードバンド企画が取得した免許は前者の移動系全国バンド。2008年夏には後者の固定系地域バンドも免許の割り当て事業者が決まる見込みである。

 本連載では,モバイルWiMAXの特徴や仕組みについて4回に渡って解説する。

低廉で高速な無線ブロードバンドを実現

 モバイルWiMAXの通信速度は20MHz幅の帯域を利用した場合で最大75Mビット/秒。1台の基地局で半径2~3kmのエリアをカバーできる。数多くある無線アクセス技術の中で,モバイルWiMAXの位置付けは以下のようになる(表1)。

表1●モバイルWiMAXと他の無線アクセス技術の違い
表1●モバイルWiMAXと他の無線アクセス技術の違い
通信速度,カバー・エリア,技術の中立性,周波数の利用条件の4要素で比較した。
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 通信速度は,現在実用化されている他の技術に比べて高速と言える。PHSは数百kビット/秒,携帯電話を利用したHSDPAやEV-DO Rev.Aも現状は数Mビット/秒である。無線LANはIEEE802.11a/gで最大54Mビット/秒,IEEE802.11nで100Mビット/秒超と高速化が進んでいるが,1台のアクセス・ポイントでカバーできる範囲は半径数十~百数十メートルと狭い。

 ただ,第3世代携帯電話(3G)を高度化した3.9G(第3.9世代携帯電話)や4G(第4世代携帯電話)では100Mビット/秒以上の通信速度を実現する予定で,モバイルWiMAXと競合することになる。

 このため,3Gを採用する多くの携帯電話事業者はモバイルWiMAXに対して一歩引いた見方をしている(韓国のWiBroのように,新たなビジネスを作り出す手段としてモバイルWiMAXを展開している事業者も存在する)。

 一方,これまで3Gに投資してこなかった携帯電話事業者は全く異なる見方をしている。モバイルWiMAXを「固定ブロードバンドの代替手段」あるいは「ハイエンド・ユーザー向けの限られたパケット通信サービスを少ない設備投資で実現できる手段」として注目している。むしろ世界規模で見ると,このような考え方が主流だろう。将来は無線ブロードバンドとして利用する選択肢を残しつつ,当初は固定ブロードバンドでサービスを展開するアプローチでモバイルWiMAXの採用を検討している事業者が多い。

 またモバイルWiMAXはこれからブロードバンド化を進めようという国にとって打ってつけの技術でもある。モバイルWiMAXの最大の特徴は端末からインフラ,サービスまでを世界規模で供給する動きが進んでいる点にある。WiMAXの業界団体「WiMAXフォーラム」には約500社の通信事業者やベンダーが参加している。需要の拡大とともにベンダー間の競争が進み,基地局や端末の低価格化を期待できる。ブロードバンドの普及には加入者当たりのインフラ・コスト,特に端末コストを下げることが不可欠で,モバイルWiMAXはまさにこうしたニーズに応えられる。

 さらに今後は,専用の通信端末だけでなく,ノート・パソコンやPDA(携帯情報端末),携帯ゲーム機,携帯音楽プレーヤ,デジタルカメラなど,様々なデバイスにモバイルWiMAXの通信機能が組み込まれていくことが予想される。市場の裾野が広がり,端末コストのさらなる低下を期待できる。こうした世界規模の供給体制を背景に,低廉で高速な無線ブロードバンドを実現,普及させようとしている技術がモバイルWiMAXである。

 これに対してiBurstFLASH-OFDMといった他の技術の多くは,特定のメーカーが独自に開発したシステムである。もっとも3Gや無線LANでも世界規模で供給が進んでいるが,モバイルWiMAXはそれを凌駕する最大のデファクト・スタンダードになる可能性が高い。

物理層とMAC層はIEEE802.16e-2005標準を利用

 モバイルWiMAXの技術を構成する要素は,(1)アンテナ(RF)などの無線部分,(2)変復調器を含めた物理(PHY)層,(3)無線リソースを制御するMAC層,(4)ネットワーク層に分けることができる。このうち,物理層とMAC層はIEEE802.16e-2005標準を用いている。詳細は第2回以降で説明するが,移動伝搬環境でのゆがんだ信号の処理に適したOFDMAをベースに移動系システムで培った改善技術を盛り込んである。

 もともとIEEE802.16は,1990年台後半に活躍した「LMDS」(local multipoint distribution system)やMMDS(multichannel multipoint distribution system)に代表されるFWA(fixed wireless access:固定無線アクセス)の標準化を目的に,物理層とMAC層の規格として策定された。2G~66GHz FWAの「IEEE802.16-2001標準」の標準化に始まり,2G-11GHz FWA向けのIEEE802.16aのドラフト(草案)が発行され,IEEE802.16dまでの改版を経て「IEEE802.16-2004標準」として発行された。

 現在,市場に出回っている固定用WiMAXの機器は,このIEEE802.16-2004標準に準拠した物理層とMAC層を利用している。ただ,ADSLに比べて加入者当たりのコストが下がらなかったこともあり,固定無線アクセスとしての需要は大きくブレークするには至っていない。

 その後,IEEE802.16-2004標準にモバイル用途の技術を加えた「IEEE802.16e」のドラフト作成が2004年ごろから始まった。iBurstやFLASH-OFDMといった他の無線アクセス・システムに対するIEEE802.16標準の優位性を高めるのが狙いである。

 IEEE802.16eでは物理層を中心に「S-OFDMA」(Scalable-OFDMA)や「HARQ」(hybrid automatic repeat request),「PUSC」(partial usage of subchannels),ハンドオーバーなど移動通信環境に適した機能や仕様を導入。さらにMIMO(multiple input multiple output)やビーム・フォーミングといった周波数の利用効率を高める技術やカバレッジを向上する技術を取り入れ,2006年2月にIEEE802.16-2004標準の修正版として「IEEE802.16e-2005」が正式に発行された(図1)。

図1●モバイルWiMAXに関連する標準化や業界団体の動き
図1●モバイルWiMAXに関連する標準化や業界団体の動き
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WiMAXフォーラムで実用化に向けた機器の認証を実施

 ただし,標準化が完了してすぐに実用化できるわけではない。携帯電話や無線LANで実証されているように,世界に市場を広げるには端末とインフラの相互接続性を確保しなければならない。端末の自由度を高め,通信事業者間でローミングできるようにする必要もある。そこで,WiMAXを利用した端末やインフラの相互接続性の確保を目的に誕生した業界団体が前述のWiMAXフォーラムである。

 相互接続性を保証するには物理層とMAC層だけを規定したIEEE802.16e-2005では不十分で,上位層も規定する必要がある。またIEEE802.16e-2005には数多くのオプションがあり,その中から相互接続性を保証する機能を選定しなければならない。WiMAXフォーラムでは,相互接続性の保証に必要となる追加の規定と機能の組み合わせ(プロファイル)を決めて試験仕様書に落とし込み,それを基に相互接続性の認証試験を実施する。無線LANの相互接続性を認証する「Wi-Fi Alliance」と似ている。

 現在,WiMAXフォーラムによって認証された機器は「IEEE802.16-2004標準」をベースにした固定無線システムだけである。IEEE802.16e-2005標準をベースとしたモバイルWiMAXの認証は,韓国のWiBroが「Wave-1」,それ以外は「Wave-2」として二つに分けて実施する。Wave-1とWave-2の2.5GHz帯は既に2007年12月から認証試験が始まっており,Wave-2の3.5GHz帯は2008年第2四半期に開始する予定である。

 Wave-1は韓国のWiBroの機器だけに規定されており,Wave-2で認定される機器とは異なる機能群を持った製品になる。両者間の互換性は保証されない。またWave-2の認証試験はテスト・ケースによっては,当初は簡略的に実施し,回を重ねるごとに検証項目を順次追加していく方法を採っているものもある。このため,すべての試験項目を完全にクリアした認定製品が市場に出回るのは2008年後半の予定である。

 なお,Wave-1とWave-2で試験内容は異なり,両者間の互換性は保証されない。またWave-1とWave-2の認証は,利用する周波数帯に応じてそれぞれPhase-1とPhase-2に分けて実施する。2007年末から開始したWave-2の認証は2.5GHz帯が対象(Phase-1)で,その他の周波数帯(2.3GHz帯や3.5GHz帯)の認証はPhase-2として2008年夏から開始する予定となっている。Wave-2の検証項目は多く,Phase-1とPhase-2で試験内容も異なる可能性がある。

 WiMAXフォーラムはモバイルWiMAXを利用した無線ブロードバンドを日本で普及させるため,2007年6月に日本オフィスを設置した。現在,日本オフィスでは,規制や技術面の課題と解決策をまとめる「テクニカル&レギュラトリーWG」とアプリケーションの提案やマーケティング全般を担当する「アプリケーション&マーケティングWG」の二つのワーキング・グループを設置して活動している。

 このうち,規制に関しては端末の包括免許をモバイルWiMAXのサービスに適した形に変えることを考えている。通信事業者が開発・販売するだけでなく,メーカーが主体となって商品の企画から開発,製造,流通までを担い,ユーザーが用途に応じて端末を自由に選ぶことができる環境の実現である。これにより,携帯ゲーム機や携帯音楽プレーヤ,デジタルカメラといった様々な機器にモバイルWiMAXの機能が組み込まれていくことになる。

 次回は,IEEE802.16関連の標準技術やWiMAXフォーラムが規定するシステム・プロファイルについて解説する。

望月 孝志 NEC システムプラットフォーム研究所 主任研究員
WiMAXのシステム制御の研究開発に従事

八木 学 NEC モバイルワイヤレスネットワーク事業部 シニアエキスパート
WiMAXのシステム開発および標準化に従事

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