「有望な見込み客にどうアプローチするか」では、日本ビジネスコンピューターの事例がユニークだ。「ハイパーセッション」と呼ぶ顧客とのリレーション活動を通じ、顧客の課題を徹底的に洗い出して解決策を提案すべく、インフラや業務システム分野の専門技術者に加えて業務改善に強いコンサルタントなど、JBCCの抱えるスタッフを総動員してアプローチしている。

 攻めるべき顧客層が定まったら、その顧客層からいかに効率的に見込み客を発掘するかが次のテーマ。特にSMB市場では、「大企業に劣らず、リードの発掘までの時間・手間がかかる」(NEC第二国内SI推進本部の望月正士本部長)という課題を訴える声は多い。

 そこで電話営業を中心とした「テレコール」への取り組みが盛んだ。これは見込み客の管理からリード発掘までをコールセンターに集約し、営業はリードの成約に集中することで活動の効率化を図る手法。例えばNECは、この1~2年でコールセンターの機能を強化。年商300億円以下の見込み客の発掘はコールセンターにほぼ集約したほか、現在はネット経由のリード発掘機能も統合している。例えば自社サイトで提供している「Webセミナー」の受講者には、電子メールや電話で来場型のセミナーに勧誘するといった具合だ。

 コールセンターで管理する企業リストは5000社に上る。「このうち4割はIT投資のキーマンを把握できるまで入り込み、次のシステム需要を探っている」(望月部長)。

テレコールからの後工程を見直す

図1●JBCCは、見込み客のキーマンを招待する「ハイパーセッション」で勝率アップ
図1●JBCCは、見込み客のキーマンを招待する「ハイパーセッション」で勝率アップ
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 しかしリード発掘後の営業活動に目を向けると、相変わらず大企業と同じような手間と期間をかけているケースは多い。

 この後工程を、SMB市場に向けて抜本的に見直したのが日本ビジネスコンピューター(JBCC)。新規の見込み客を相手に、「ユーザー企業の担当者がJBCC本社に来訪する」という、従来とは逆の営業プロセスに変更したのである(図1)。対象にしている案件は年商50億~200億円の新規顧客に対する基幹系システムの提案。同社が「ウィンバック」と呼ぶ、競合他社からのリプレース商談である。

 このウィンバック専門の営業活動を推進する「さらばレガシー移行センター(SLTC)」の板垣清美センター長は、「SMB市場だからこそ、システム部長や社長に来てもらう手法に踏み切れた」と語る。



商談期間が「3カ月以内」に短縮

 JBCCが見込み客を本社に呼ぶのは「ハイパーセッション」と呼ぶ顧客とのリレーション活動を通じ、「JBCCの持てる提案力をすべて顧客に見せるため」(板垣センター長)。顧客の課題を徹底的に洗い出して解決策を提案すべく、インフラや業務システム分野の専門技術者に加えて業務改善に強いコンサルタントなど、JBCCの抱えるスタッフを総動員。セッションの最後には「顧客がJBCCの“とりこ”になっている」(板垣センター長)という算段を描いている。

 見込み客は、2段階でハイパーセッションに招待する。初回のセッション参加者は情報システム部長や部門スタッフなどで、現行システムを巡る課題を広く洗いだす。このセッションを通じて、顧客ニーズが業務システムを温存してハードを入れ換える「リホスト」にあるのか、それとも業務システムも全面刷新する「再構築」にあるのか、答えを導く。

 結論がリホストなら、2回目は再びシステム部門に参加してもらい移行計画を徹底議論。再構築に発展した場合、2回目には経営者層や現場責任者に参加してもらい、業務プロセスの洗い直しから議論する。最後にJBCCは業務システムの在るべき方向性を提案するという手順である。1日で実施するこのハイパーセッションでほぼ受注が決まる商談もあれば、より徹底した業務分析のセッションに招待して勝負をかける商談もある。

 この手法で上げた成果は大きい。テレコールで発掘し営業に引き渡した月間のリード約60件に対し、ハイパーセッションの参加に至った顧客は約10件、受注を勝ち取った顧客は約3件。他社からのリプレース商談としては「驚異的な営業効率アップ」(板垣センター長)である。

 何よりも大きい効果は、商談期間が3カ月以内へと大幅に短縮したこと。顧客の決断が早まったことで競合に付け入る隙を与えず、勝率アップにも寄与したという。

 顧客を自社の拠点に招待し、「顧客の決断を促す」ことを狙うソリューションプロバイダはほかにも増えている。例えば、NECネクサは年商100億円未満の顧客層に対し、ショールームでの商談を営業プロセスに多く取り入れる改革を進めている。