写真●日経NETWORKの加藤雅浩副編集長
写真●日経NETWORKの加藤雅浩副編集長
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 「データセンターが注目を集めている。情報漏洩対策として,ディザスタ・リカバリの拠点として,SaaS(Software as a Service)のプラットフォームとして,ニーズが高まっているからだ」――。日経NETWORKの加藤雅浩副編集長は2008年2月1日,ITpro EXPO 2008の「名物記者によるトレンド解説」で,データセンターとそれを支えるネットワーク技術の最新動向について解説した(写真)。

 加藤副編集長は,データセンターに求められていることは,「データ転送が停滞しないこと」「システムがダウンしないこと」「サーバーやストレージが物理的にあふれないこと」であると指摘。ネットワーク技術の進化も,このようなデータセンターのニーズを踏まえたものになってきているという。「標準化が進んでいる40Gビット/秒のイーサネットは,主にデータセンターでの利用が想定されていると聞いている」(加藤副編集長)。

 また,これらのニーズを踏まえてデータセンターにも変化が起きているという。(1)高速な光バックボーンの構築,(2)安定的なネットワーク・インフラの構築,(3)高密度なラック構成,である。

ネットワーク機器を冗長化する新技術が登場

 まず光バックボーンについて,加藤副編集長は「通信キャリアのダークファイバを借りて,WDM(波長分割多重)伝送装置と組み合わせ,データセンターと外部ネットワークの間を数十Gビット/秒で結ぶ」と説明。波長を変更することで増速できる点も大きなメリットだという。「2種類の波長で20Gビット/秒,4種類の波長を使って40Gビット/秒の速度を実現しているデータセンターが多いようだ」。

 冗長化技術については,従来のスパニング・ツリー・プロトコルとは異なる,新しい技術を使う動きがあるという。シスコのVSS(Virtual Switching System)がその一例だ。2台のネットワーク機器を専用モジュールでつなぎ込み,1台に不具合があっても,もう1台が通信を継続する。スパニング・ツリー・プロトコルでは不具合時の切り替えに時間がかかるなどの欠点があったが,VSSではこれを解消できる。

 また,VSSはつないだ2台のネットワーク機器を1台にみせることが可能だ。しかも2台とも常時アクティブな状態であるため,機器を有効に活用できる。同様の技術は,アライドテレシスや日立電線も自社製品に搭載しているという。

 ラック内の高密度技術については,ブレード・サーバーの登場が大きい。「システム管理者がいつも悩むのは,サーバーの配線。ブレード・サーバーは内部に通信用のバスを備えているため,配線が不要になる」(加藤副編集長)。

 ただ,課題もあったという。機器の故障でブレードを交換すると,ブレードのMACアドレスが変わってしまうため,ブレード内の通信設定をその都度変更しなくてはならなかった。これを解消する技術として,日本ヒューレット・パッカードの管理ツール「Virtual Connect Enterprise Manager」が有用だという。ブレードを収納するスロットごとにMACアドレスをひも付ける機能があるため,通信設定を変更する必要がない。

 「こういった仮想化技術は,サーバーやネットワークの運用の負荷を軽減する効果がある。また,ITを使ったサービスをいち早く提供することにもつながるため,データセンターでの利用が増えるだろう」。ただ,「仮想化技術がベンダーによって異なるため,複数の仮想化技術を使う場合に運用が複雑になってしまうのが難点だ」と,加藤副編集長は今後に向けた課題にも言及した。