日経ソリューションビジネスの中村建助編集長
日経ソリューションビジネスの中村建助編集長
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 「企業情報システムのあり方や作り方が大きく変わりつつある。インターネットを使って外部のサービスやコンテンツと社内のシステムを自由に組み合わせ,ビジネスで成果を上げるための有益な情報を収集・活用できる時代がやってきた」。

 ITpro EXPO 2008の講演「今,そこにあるEnterprise 2.0」で,日経ソリューションビジネスの中村建助編集長は,こう切り出した。Enterprise 2.0とは,社内外を問わず有益な情報をうまく集めてビジネスに生かす企業,あるいは,そのような仕組みを実現する情報システムのこと。この興味深い動きは2006年に始まり,2007年以降,確実に広がりつつある,という。

 Enterprise2.0時代におけるシステム開発とはどのようなものか。中村編集長は次のように説明する。

 「すべてを自分たちで手作りするのではなく,かといって,ありもののパッケージを買うだけでもない。今後は,必要に応じて外部のサービスやコンテンツをインターネット経由で取り込み,それらを組み合わせてシステムを作る,というスタイルが一般化してくる。逆に,自社が持っているデータを外部に提供することで,いろいろなビジネス・チャンスを作る,といったケースも増えるだろう」。

 情報の集め方や使い方は,具体的にどのように変化するのか。中村編集長は考えられる一例として,電機メーカーの販売予測システムを挙げた。

 多くのメーカーはこれまで,小売店での売上情報などを,手間とお金をかけて収集し,販売予測に利用してきた。しかし現在では,カカクコムが運営する価格情報サイト「価格.com」から,市場の実態を正しく反映した情報を収集できるようになった。これにより「お金をかけずに,これまでより有益な情報をシステムに取り込むことができる」(中村編集長)。

コンシューマライゼーションとWeb2.0が変化の原動力に

 このような変化を引き起こしているものは何か。中村編集長はこれを,2つのキーワードで説明する。「コンシューマライゼーション」と「Web2.0」である。

 米ガートナーのフェローであるデビッド・スミス氏によれば「ハードウエア,ソフトウエア,サービスのすべては,コンシューマ(消費者)の市場を起源とし,エンタープライズ(企業)に大きな影響を与えるようになってきた」という。これがコンシューマライゼーションだ。実際,「最近ではメインフレームなどの大型ハードウエアや高価な法人向けソフトウエアではなく,より消費者に近いインターネットの分野で技術革新が相次いでいる」(中村編集長)。

 特に進歩が著しいのは,ブログやSNS,ソーシャル・ブックマーク,動画共有サイト,Wiki,RSS,Ajaxなど,集団の知識を生かしたり,ダイナミックに最新のトレンドを伝えたり,Webを使いやすくしたりする技術である。最近では,このような技術や,その根底にある考え方を「Web2.0」と呼ぶことが一般化している。Web2.0という言葉は,米オライリー・メディアのCEO(最高経営責任者)であり,創業者でもあるティム・オライリー氏が発案したものだ。