繁野 高仁 氏 矢坂 徹 氏
        山野井 聡 氏

 企業でIT(情報技術)を担う情報システム部門の役割と機能が今、変わりつつある。ところが、その重要性に気付いている経営者はまだ少ない。このままでは手遅れになる――。KDDIの前CIO(最高情報責任者)である繁野高仁氏、米ファイザーのCTO(最高技術責任者)を務めた矢坂徹氏は危機感を募らせる。ITリサーチ大手、ガートナー・ジャパンの山野井聡リサーチグループ バイスプレジデントを交え、「経営とIT」を巡る問題の本質を徹底議論した。



山野井: 今日は「経営とIT」の融合がテーマです。融合という言葉が少し曖昧なのでそこを深掘りする話ができたらいいと思っています。
 本題の前にお聞きしたかったことがあります。お二方とも今までは、ITや情報システムを利用するユーザー企業のお立場で、システムを販売するITベンダーと相対されてきました。私はアナリストとして日本のITサービス市場動向を追っているので、KDDI時代の繁野さんとファイザー時代の矢坂さんに、たびたびお目にかかりました。
 お二方とも現在は独立されておられます。外からユーザー企業を見たときに、何か新しく気付いたこと、あるいは実際に何か思いがあるので、こういうことをしてきた、といったものがもしあればお聞きしたいのですが。
 繁野さんは日本NCR時代はITベンダー側におられましたが、KDDIに移られてからはずっとユーザー側にいらっしゃいました。

繁野: 20年以上ユーザー側にいたことになります。DDIの創業からやってきましたので。そういう意味では、ITベンダーよりユーザーの情報システム部門の方が長かったわけです。ベンダー時代は8年ほどでしたが、色々なお客様に行っていました。ユーザー時代は、たまたま常駐したお客さんの担当が長かった、みたいな感じがあります。20年いたわけですので、自分がやるべきことは大体やったかなという思いがありました。
 そんな時、改めて色々な所でお付き合いしている社外の方と話していると、やっぱり日本の情報システムの問題は深刻だなあと思って、そこに自分のキャリア、今まで経験してきたノウハウですとか、人脈とか、そういうものが生かせるのではないかと思ったのです。これが独立のきっかけです。