中山 康弘(なかやまやすひろ)
株式会社DTS所属

 オブジェクト指向スクリプト言語であるPythonは,日常の作業に利用するちょっとしたスクリプトから,商用サイトや大規模Webシステムまで幅広く適用できる非常に便利なプログラミング言語です。日本ではあまり認知度は高くありませんが,欧米を中心に幅広く利用されており,米Google(米YouTubeを含む)などの有名企業でも採用されています。

 ここでは,プログラミング言語Pythonの魅力と使い方を説明します。特にこれからPythonをはじめようというビギナーの方に,とっかかりとなる言語の基礎と導入方法を説明します。

日本でPythonの認知度があまり高くない理由

 欧米で人気のPythonですが,国内ではまだまだ認知度が高くないようです。原因としては次のような点が考えられます。

●日本語コーデックに対する不安

 Python 2.3の時代まで,シフトJISやEUC-JPを扱うためには,CJKコーデックというものを別途用意する必要がありました。CJKコーデックとは,各国のエンコードとUnicodeの間でコード変換をするためのモジュールです。2004年にリリースされたPython 2.4以降は,標準でCJKコーデックが内包されているので,それ以降のバージョンではCJKコーデックを別途インストールする必要がなくなりました。

●日本語のドキュメントが少ない

 かつてはPythonに関する日本語記事も少なく,情報量が少ないためPythonでコードを書くのが難しい時代がありました。しかし,最近では国内でもPythonに関する書籍がたくさん発売されています。ネットで検索してみると一目瞭然でしょう。言語そのものに限らず,Python向けのWebアプリケーション・フレームワークに関する書籍も続々登場しています。また,ブログ記事やWebメディアでもPythonを扱う記事が増えています。

いま,なぜPythonなのか

 Ruby on Railsの世界的なヒットにより,日本発のプログラミング言語Rubyが非常に注目を集めています。それにともない,動的で柔軟なスクリプト言語の認知度や評価が高まってきています。Pythonは,Rubyと同様にオブジェクト指向スクリプト言語であり,動的で柔軟であるという性質が似ています。

 では,Rubyではなく,あえてPythonを利用する理由は何でしょうか。ここでは細部についての比較は避けますが,Pythonの特徴をざっと挙げてみましょう。

(1)堅牢で安定している

 開発体制については,PSF:Python Software Foundationという非営利組織があり,Pythonの知的財産権の管理と普及推進をおこなっています。また,Pythonは下位互換性の維持について常に考慮されています(後述のPython 3.0を除く)。

(2)実績がある

 GoogleやYouTubeなどのほか,米MicrosoftでもPythonが採用されています。動作するプラットフォームは,UNIXやWindows,Mac OS Xはもちろんのこと,携帯電話やPalmに組み込まれている例もあります。また,Linuxディストリビューションのインストーラやシステム管理などの重要な基盤を支える言語でもあります。

Python 3.0について

 2008年には,Pythonの新版(3.0)のリリースが予定されています(原稿執筆時点ではアルファ版の段階です)。これはPython 3000という開発コード名で呼ばれていたものです。

 Python 3.0は,これまで重要視してきた下位互換性を一部切り捨てて,開発されています。これはPythonの完成度をより高めるための野心的な試みです。print文を組み込み関数にする,除算の結果を切り捨てから浮動小数点数にするといった言語設計の見直し,Unicodeサポートといった国際化の強化などが実現される予定です。

 ただし,Python 3.0リリース後も,2.x系は継続的にメンテナンス・リリースが行われます。またPython 3.0への移行をサポートする診断ツールなども提供される予定です。