米国経済は一部不振に陥っているものの,好景気に沸くIT産業にはこの見方は当てはまらない。2,3年前にインターネットバブルが弾けた後,IT関連の出費は底をついたが,最近になってIT関連業種は再び目覚しく発展した。

 しかもその発展は米国のみにとどまらない。ガートナーグループでは,2007年のIT関連投資が世界中で3兆ドルを上回ると予測している。この成長は2008年も続く見込みであり,投資額は3兆3千億ドルを超えると見られる。

 IT関連職種の好況によって,IT産業に携わる人々の自分たちの職業に関する見通しも明るくなると思われるかもしれない。しかし,一部のITプロフェッショナルたちはそうは考えていない。

 アメリカの大学におけるコンピュータ情報システム(CIS)専攻学生数の減少を報じた最近のニュース,そしてIT関連職種の満足度を示す様々なニュースを見ると,読者が自身のITジョブについてどう感じているか,職種の満足度が低い理由,それに対する対策など,いろいろなことを考えてしまう。この記事では,IT関連職種市場の現状について分析し,職業として見た場合のITの現状に関するITプロフェッショナルの意見を抜粋して紹介する。

IT業界は売り手市場

 Microsoftの後援で実施されたIDCの調査では,近い将来IT関連の投資が劇的に増加するだろうことが指摘された。IDCではIT関連で,10万の新しい企業が誕生し,2012年までに710万以上の雇用が創出されると予測している。この調査では,MicrosoftはIT産業における最も重要な企業であり続けるだろうという結論も出ている。Microsoftは2007年に総計3520万人が携わっているIT産業のうち,1470万の雇用を直接または間接的に創出しているからある。

 IDCの調査結果発表の席上,MicrosoftのCRSO(Chief Research and Strategy Officer,最高研究開発責任者)Craig Mundieはこう述べた。「IDCの調査により,世界中の先進国および発展途上国の両方において,現地の雇用創出および経済の発展にソフトウエアが大きく貢献していることが具体的な数値で示された。何百万人もの人々が世界中でMicrosoftの関連事業に従事しており,2007年には世界中の政府に5千万ドル以上の税金を納めている」。

 IT投資ブームは,あらゆるスキルレベルのIT専門家に対する継続的な需要と強い相関関係がある。IT関連の人材スカウト会社Robert Half Technologyの副社長であるJohn Estes氏によれば,IT産業は爆発的な発展により,求職者によっては良い業種となったという。「現時点ではまさに売り手市場である。IT産業に従事したいと思うほとんどすべての人が現在この業界で職を得ている。現在職に就いていない人は,プロジェクトの端境期にあたっているか,または単に働かないことを選択しているだけである。我々が調査を行ったすべてのCIOの意見,および私の個人的な経験から判断すると,あらゆるタイプのネットワーク管理者に対する需要は非常に大きい」。

 Estes氏はRobert Half Technologyの顧客からの需要が最も大きい職種として,ネットワーク管理者,ネットワーク・エンジニア,およびネットワーク・サポートスタッフの三つを挙げた。ノートPC,Palm Treo,Research In Motion (RIM)のBlackBerry,およびその他のモバイル・アセットを管理するモバイル管理者の需要も増加しつつあるという。

 Estes氏の話では,トレーニングおよび資格の話になると,各企業からの要求は大きく異なる。「実務経験を資格よりも重視するクライアントもあれば,その逆のクライアントもある」。Estes氏の話では,通常はMCSA(Microsoft認定システムアドミニストレータ)の資格を持つ応募者の需要が大きいが,企業によってはCCNA(Cisco Certified Network Administrator)およびCCNP(Cisco Certified Networking Professional)の資格を求めるところもある。