Googleは,市場を支配している検索エンジンのほかにも,Gmail,Google Calendar,Google Docs & Spreadsheets,Blogger,Picasa,YouTubeなど,多数のWebベースの製品やサービス,サーバー,クライアント・アプリケーションに手を広げている。驚かされるのは,GoogleはMicrosoftのことを少し見下したような態度を取っているにもかかわらず(GoogleのCEOであるEric Schmidt氏は,このソフトウエア界の巨人について,オンライン上では「それほど大したライバルではない」と述べたことがある),MicrosoftがGoogleとほかの「クラウド・コンピューティング」企業を最大のライバルだと認めていることである。

 それでは,この両社のどの部分が競合しているのだろうか? 最大規模の企業カスタマにとっては,Googleは遠い未来の希望でしかない。そして,同社はMicrosoftが提供しているようなコア・インフラストラクチャ・サーバーは全く提供していないのだ。しかし,個人ユーザーから中小規模企業(SMB)まで,その他のすべての人にとっては,Googleの提供するソリューションは非常に魅力的なのである。

 そうしたソリューションの最たる例が,Google Appsである。Google Appsは強力なオンライン・ツールのスイートで,Webベースの電子メールやカレンダー,IM,Webホスティング,そして文書の作成とコラボレーション(現在は,ワープロと表計算が利用可能で,近いうちにデータベースが追加される予定)を提供する。個人や家族のユーザーは,GoogleのGmail.comドメインや自分のドメインを無料で使うことが可能だ。SMBや教育機関は,非常に低いコストで,同サービスの拡張バージョンにアップグレードすることができる。

 ExchangeのようなMicrosoftのソリューションと比較して,Google Appsが有利な点はたくさんある。Google AppsはGoogleによってホスティング,管理されている。したがって,カスタマは技術スタッフを雇用,訓練,管理しなくても,電子メールやカレンダーなどのサービスを利用することができるのだ。Google Appsのアプリケーションは多くの場合,Microsoftのソリューションほど複雑ではない。そして,最近大学を卒業したような新入社員はすでにGoogleやGmailに習熟しているため,少しの訓練でGoogle Appsを使いこなせるようになるのだ。さらに,Google Appsは一般的にExchangeより安価である。小規模企業にとっては,特にそうだ。

 Googleは,大企業のニーズにも応えられるように,Google Appsの拡張に取り組んでいる。そうしたニーズには,セキュリティやアップタイム,パフォーマンスなどが含まれる。おそらくGoogleは今後数年間のうちに,ユーザーとなる組織の規模に関係なく,これらのニーズを満たせるようになるだろう。しかし,現時点では,同スイートはほとんどの企業が必要とする機能やアップタイム保証を提供していない。

 もちろん,Webサービスに関して最も多い不満は,ユーザーがオンラインにいないとサービスを利用できないことだ。しかし,二つの新しい事象によって,この不満は若干軽減された。

 一つ目は,スマート・フォンからWebサービスにアクセスできるユーザーの数が,どんどん増えてきていることだ。しかも,小規模企業でも職員にそうしたデバイスを支給できる程度にまでコストが低下しているのである。スマート・フォンでは,ユーザーがオフラインになることはめったにない。そして,近いうちに飛行機内での使用規則が変更される予定なので,それが実現すれば,最後の障害も取り除かれるだろう。

 二つ目は,オフラインのWebアプリケーションとサービスを対象とするソリューションを発見した,とGoogleが話していることだ。Google Gearsと名づけられたこの技術を利用すると,ユーザーはオフライン中でもGoogleのWebサービスにアクセスできるのだ。現時点で,この技術を利用しているGoogleのサービスは,Google Readerのみである。Googleは,Google Gearsに対応した他のサービスを今後オンラインで公開していく,と話している。

 その一方でGoogleは,オフラインでサービスを利用したいというカスタマのニーズに,他の方法で応えようとしている。例えば,Sun Microsystemsと提携したことで,GoogleはSunが70ドルで販売している「StarOffice 8」オフィススイート(Microsoft Officeの競合製品)をGoogle Packサービスを通して無料で提供している。StarOfficeは,Office 2007よりもOffice 2000に似ており,多くのカスタマが必要とするワープロや表計算,プレゼンテーション,データベースの機能を提供している。そして,価格設定は非常に魅力的である。多少の互換性問題はあるが,StarOfficeと組み合わせると,Google AppsはExchangeとMicrosoft Officeの機能の多くを無料で,あるいは最悪でもMicrosoft製品よりはるかに低いコストで,SMBに提供できるのだ。

 Google Appsの機能は多くの大企業にとって十分ではないが,SMBはGoogle Appsの評価,そしてMicrosoft技術との比較検討を今すぐ開始すべきだろう。特に教育機関は,Googleのサービスに向いている。公平を期すために言っておくと,完成度では劣るかもしれないが,MicrosoftもWindows Live Hotmailサービスを通して同様のアカデミック・パッケージを提供している。