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医療ジャーナリストの視点

朝青龍の「解離性障害」と雅子さまの「適応障害」は何が違うの?

2008/01/25 日経メディカル開発

 2008年の大相撲初場所で、横綱・朝青龍が三場所ぶりに復帰した。ニュース報道などを見る限り、精神状態や体調に大きな問題はなさそうだ。2日目こそ負けたものの、この原稿を書いている2008年1月24日現在、10勝1敗という成績。さすがに2場所連続で欠場したため従来の切れ味には欠けるという指摘もあったが、それでも勝つためにはかなりの集中力、精神力が必要なことは素人の私でも想像できる。ということは、昨年の夏以降、モンゴルでの療養が必要なほど不安定になった精神状態も、もうかなり落ち着きを取り戻したということになるのだろうか。

 昨年の8月に、朝青龍は「解離性障害」と診断された。聞きなれない病名だが、この心の病はそんなに早く回復するものなの?と素朴な疑問がわいた。それに、そもそも解離性障害とはどんな症状を伴う病気なのだろう。ストレスによるうつ病とは全然違うのだろうか。私の身近にもうつに悩んでいる人はいる。だが、みんなそんなに早くは(例えば半年とか)、以前の元気な状態には戻れていないように見える。

 そういえば皇太子妃雅子さまの病状も、(あくまでマスコミの情報から想像する限り)今でも一進一退という感じだ。雅子さまは帯状疱疹(ほうしん)の発症をきっかけに、2003年12月から長期の療養に入られた。「適応障害」との病名が公表されたのは2004年7月なので、少なくともそれから3年は経っている。何らかのストレスが原因という点では共通するのかもしれないが、これらだけから推測しても、解離性障害は、適応障害やうつ病とは違っていそうだ。

 そこで適応障害と解離性障害について、知り合いの精神科医に何気に尋ねたところ、「それは全然違うよ」と一蹴された。まず適応障害だが、あまりなじみのない病名のように思われたが、実はかなりポピュラーな病状であり、職場のストレスで社員がかかるのは、うつ病か適応障害が多いのだそうだ。

 一読を勧められた一般向けの解説書では、適応障害は、「入学、就職、結婚、病気、事件などのはっきりとしたストレス因子によってうつ状態や不安状態、攻撃的な行動などが引き起こされるもの」とされている。つまり適応障害は、明らかなストレス要因があり、それに対する直接的な反応として精神的に具合が悪くなっているというもので、原因に基づくおおまかな診断名と考えたら分かりやすいそうだ。

 一方、解離性障害だが、こちらは適応障害とは違って症状を基に病名が付けられている。簡単にいえば、「わたしはだれ、ここはどこ?」状態になってしまうのが解離性障害で、例えば『24人のビリー・ミリガン』で有名な多重人格もこの特殊なタイプなのだそうだ。

 解説書によれば、解離性障害とは「こころのまとまりや連続性に支障をきたした状態」であり、患者さん自身が最もよく体験するのは「空白の時間」だとされている。空白の時間とは、その間の記憶が途切れていて、自分がいったい何をしていたのか思い出せないという状況だ(つまり、「わたしはだれ、ここはどこ?」状態というわけ)。

 しかし、私たちだって、何かすごくショックなことがあれば、茫然自失となって、その間の記憶が途切れることもあるではないか…とも思ったが、解離性障害のそれは、ど忘れとか物忘れといった水準を超えたものであり、その間も患者さんは比較的まとまった行動をとっているため、「周囲の人は、患者さんが解離状態にあることを気づかないこともしばしばある」のだそうだ。実際、自分が知らない間に友達が増えていた、なんてケースもあるらしい。したがって、解離性障害は適応障害と比べて、割と珍しい病状なのだそうだ。

 なお、解説書によると、解離性障害の原因としては、すべての人に当てはまるわけではないが、精神的に外傷的な出来事、特に子供のころに虐待を受けた体験が原因として重要であるといわれている。また、世界保健機関 (WHO)による国際疾病分類の「ICD-10」では、「解離性障害の全てのタイプは数週間ないしは数カ月後には寛解する傾向があり、発症が外傷的な生活上の出来事と関連しているならばとりわけそうである」とされている。ということは、解離性障害と診断された人が、早期に回復しても違和感はないということになるのだろう。

 私は精神科領域の専門家ではないし、もし専門家であったとしても直接診療したわけでもないので、特定の人の診断や病状についてコメントすることはできない。ただ一般的にいえば、適応障害の場合は、はっきりとしたストレスが原因なので、そのストレス因子がなくならない限り、病状がすぐに好転することを期待するのは難しいようだ。また、今回、適応障害とうつ病との違いも気になったが、聞くところによると、うつ病はストレスなどが原因で発症することもあれば、明らかな原因がなくても起こることがあるのだそうだ。ここでは詳しくは述べないが、適応障害からうつ病になることはあっても、両者は異なるものということだ。

 さて、最後に自戒も込めて、ある精神科医からいただいたコメントを一つ付け加えておく。「何ごとも“精神医学化”されて病名がついてマスコミで語られる、という最近の世相に注意すべし…」。

瀬川 博子(せがわ ひろこ)
1982年国際基督教大学教養学部理学科卒。日本ロシュ研究所(現・中外製薬鎌倉研究所)勤務を経て、88年日経BP社に入社。雑誌「日経メディカル」編集部で長年にわたり、医学・医療分野、特に臨床記事の取材・執筆や編集を手がける。現在は日経メディカル開発編集長として、製薬企業の広報誌など医師向けの各種媒体の企画・編集を担当。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)技術委員。

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