ミッション・クリティカルな分野、ERP、セキュリティ管理などのシステム構築で強みを持つ三菱電機インフォメーションシステムズ(以下、MDIS)は、従来からオープン環境でのインテグレーション技術を磨いてきた。その蓄積を基にソリューション体系を整備。この中核をなすのが、システム基盤フレームワーク「MIWESTA」である。MIWESTAの内容やプロジェクト・マネジメント能力をさらに強化することで、MDISは「快適・安心・発展のシステム」の実現を目指している。

三菱電機インフォメーションシステムズ 代表取締役 取締役社長 志岐 紀夫 氏
三菱電機インフォメーションシステムズ
代表取締役 取締役社長
志岐 紀夫 氏

 三菱電機の情報システム事業を再編・分社化し、2001年に誕生した三菱電機インフォメーションシステムズ(MDIS)。2000人以上の社員を擁する「ワンストップSIer(Solution Integrator)」として、これまで数多くの顧客にサービスを提供してきた。

 同社の得意分野は大きく3つある。第1に、金融機関や交通インフラなど公共性の高い分野でのミッション・クリティカルな情報システム。第2に、製造業向けのERPシステム。第3に、三菱電機の持つ信頼性の高い暗号アルゴリズム「MISTY」を核としたセキュリティ管理システムだ。

 MDISはこれらの強みを生かし、企業の「攻めの経営」をサポート。同社社長の志岐紀夫氏は「攻めの経営実現のキーはIT武装化です。ITがビジネスに深く入り込んだ現在、ミッション・クリティカルの重要性も高まっています。例えば、以前なら企業のホームページが数時間ダウンしても影響はさほど大きくなかったかもしれませんが、今は違います」と強調する。

 一方、技術の動きにも目配りする必要がある。特に注目すべきはオープン化だろう。「クローズな擦り合わせから、オープンなモジュールの組み合わせへという動きは今後も続くでしょう。例えば、通信の分野ではIP化、ソフトウエアの分野ではオープン・ソース化といった動きが加速しています。その中で、オープン化による課題も顕在化しています。ベストエフォート仕様での性能と品質の限界をいかに克服するか、デファクト・スタンダード仕様でのセキュリティをいかに確保するか。そして、マルチベンダー環境での相互接続性や保守性の確保も大きな課題です」(志岐氏)。

 これらの課題に対してMDISは、ミッション・クリティカル・システムの経験を生かした幅広いソリューションを提示している。

「MIWESTA」を中核にソリューション体系を拡充

 MDISのITシステムビジョンは、「お客様の複合ニーズに柔軟に対応するワンストップ・サービスを提供すること」(志岐氏)。ワンストップとは、コンサルティングや構想企画から設計、開発、導入、運用監視、保守というサイクルをすべてカバーするということ。そして、顧客とともに「快適(経営スピード・顧客満足・ユーザーフレンドリー)」と「安心(セキュリティ・高稼働性・コンプライアンス)」、「発展(全体最適化・変化への対応・事業継続性)」という3つの価値実現を目指している。

 こうしたビジョンを具現化するために、MDISはソリューション体系を拡充してきた。この体系は業界ごとの個別業務システム、個別業務システムに対応するワンストップ・ソリューション・フレームワーク、システム基盤フレームワーク(MIWESTA)、そしてシステム生産標準(SPRINGAM)から成っている。

企業情報システムをインフラ面から支える オープン環境での基盤フレームワーク MIWESTA
企業情報システムをインフラ面から支える オープン環境での基盤フレームワーク MIWESTA

 「コストやスピード、安心・安全、保守性や拡張性などの側面から、お客様のニーズを把握した上で、情報システムとして形にするのが私たちの役割。それを支えているのがこのソリューション体系です。もちろん、最新技術への目配りも欠かせません」と志岐氏は語る。

 MDISのソリューション体系の中核をなすのがMIWESTAである。これはMIWESTA/AP(アプリケーション活用標準)とMIWESTA/PF(プラットフォーム活用標準)の2つに分かれている(図)。

 「アプリケーションとプラットフォーム、それぞれの分野で設計の専門集団がMIWESTAの内容を充実させてきました。そのためには、主要ベンダーやビジネス・パートナー、三菱電機研究所などとの協力関係も重要です」と志岐氏は説明する。

開発費2割削減の事例もさらなる生産性向上を目指す

 MIWESTA/APは(1)上流設計を担う開発標準プロセス、(2)実行系環境整備を行う実行フレームワーク、(3)ソフトウエア資産を有効活用するサービス・コンポーネントで構成されている。もう一方のMIWESTA/PFは(1)上流設計における設計ガイド・ツール、(2)システムの設計・構築・検証を行うプラットフォーム製品の利用技術、(3)ハードウエア設計技術を結集した専用機器の開発力が3本柱。いずれも導入コストの削減やアプリケーションの高信頼化、開発期間短縮などに大きな効果を発揮する。

 「MIWESTA/APの適用事例では、開発プロセスや設計規約・技法、ソフトウエア実行基盤を標準化し、上流設計情報からコードを自動生成する技術を活用することで、開発費を従来比で2割削減できました。当然、開発期間も短縮されました。ソフトウエアの部品化や自動生成を増やすことで、この取り組みをさらにレベルアップしたいと思います。現在、2010年の生産性を2005年に比べて、2倍にするという目標を掲げています」と志岐氏は意欲的だ。

 また、プロジェクト・マネジメント力のさらなる強化にも取り組んでいる。すでに一部の部門ではCMMI(能力成熟度モデル統合:Capability MaturityModel Integration)のレベル5を取得。上流フェーズでの誤り検出が増えて、テスト段階での誤り検出が減少。出荷後の不具合件数は従来に比べ4割以上減ったという。同時に、PMO(ProjectManagement Office)の設置によるプロジェクトの見える化にも注力している。

 「人間は皆違うし、疲れるということを前提としたユーザービリティ。ハードウエアは壊れるし、ソフトウエアにはバグがつきものでも、それを前提としたディペンダビリティ。機能要件の質と量は思わぬときに変化してもそれを吸収できるアダプタビリティ。これら3つの取り組みを通じて、快適/安心/発展のシステムを実現したいと考えています」と、志岐氏は最後に力強く語った。