総務省は12月21日,PHS事業者のウィルコムと,KDDIなどが出資するワイヤレスブロードバンド企画の2社に2.5GHz帯の事業免許(開設計画の認定書)を交付した。ウィルコムは次世代PHSを,ワイヤレスブロードバンド企画はモバイルWiMAXを採用。2009年から最大20M~40M ビット/秒の無線データ通信サービスを提供する。

 2.5GHz帯の事業免許を巡っては,二つの割り当て枠に4社が申請した。日本の電波行政で初の比較審査を実施した総務省は,今までにない透明性と説明責任が求められた。電波監理審議会会長の羽鳥光俊・中央大学理工学部教授は「事業者名を伏せて厳正に審査した。透明性を高めるため,審査結果をそのまま公表した」とする。

 審査を受けたのは,免許を交付された2社のほか,ソフトバンクとイー・アクセスが出資するオープンワイヤレスネットワーク(OpenWin),NTTドコモとアッカ・ネットワークスが出資するアッカ・ワイヤレスの4社。総務省と電波監理審議会が4社の事業計画を比較審査し,優位性があると判断した2社に割り当てた(写真1)。

写真1●総務省は2007年12月21日に2.5GHz帯の開設計画の認定書を交付した   写真1●総務省は2007年12月21日に2.5GHz帯の開設計画の認定書を交付した
前列左から増田寛也総務大臣,ワイヤレスブロードバンド企画の田中孝司代表取締役社長,ウィルコムの喜久川政樹代表取締役社長。

 審査項目は,事業計画や経営の安定性,スムーズなエリア展開を支える技術力,MVNO(仮想移動体通信事業者)の促進計画など。各項目に-2~2点を割り振り比較した結果,(1)ワイヤレスブロードバンド企画(8点),(2)ウィルコム(6点),(3)OpenWin(2点),(4)アッカ・ワイヤレス(1点)の順に優れていると判断した(写真2)。

写真2●申請があった4社の計画を比較審査した結果   写真2●申請があった4社の計画を比較審査した結果

決め手となったエリア展開スピード

 差がついたのはエリア展開のスピードだった。2012年時点の人口カバー率は,ワイヤレスブロードバンド企画が93%,ウィルコムが91%で, OpenWinの78%とアッカ・ワイヤレスの64%を大きく上回った。この2社が屋内の小型基地局の整備を計画している点も評価された。ほかの2社は,無線LANの併用で屋内カバーを計画していた。

 割り当てを受けた2社は,エリア展開計画を踏まえつつも設備投資額を抑えた。「効率的な設備投資ができることは経営の安定性につながる」(羽鳥教授)と評価した。 アッカはMVNOに活路見いだす

 落選したOpenWinは「この評価については,全く納得できないし,受け入れられない」とコメント。比較審査の点数付けや審査項目の妥当性に異義を唱える可能性を示唆した。

 アッカ・ワイヤレスは,2.5GHz帯にはMVNOとして参入する意向を示した。モバイルWiMAXの利用が前提のため,ワイヤレスブロードバンド企画から卸売りを受ける形になりそうだ。加えて2.5GHz帯以外の割り当てが行われる際には,申請を検討するとした。