丸山さんはBP商事のシステム担当要員である。だが,実際は,まだ駆け出しの“自称”システム管理者だ。そんな丸山さんの力になっているのが,友人の進藤さん。鈴木社長が次々と繰り出す要求に対し,進藤さんの助けを受けながら何とかこなしてきた。
BP商事では,10月の新会社設立に向けた準備作業が大詰めだ。そんな,土曜日の早朝,休日返上で早朝に出勤した鈴木社長が,Active Directoryのドメインにログインしようとしたところが,「ログオンできません。ログオン先ドメイン BPNWは利用できません」と表示されてしまった(図1)。
図1●鈴木社長がドメインへログオンできない |
鈴木:パスワードを間違ったかな。それでは,もう一度ユーザー名とパスワードを入力してと…。またダメだ。ん? そう言えば,パスワードを間違ったときと,エラーメッセージが違うぞ。
メッセージの内容から,どうやらパスワードの問題ではないと判断した社長は,丸山さんの携帯に電話をかけた。
丸山:ふあっ~,誰? 休日の早朝に。ん? 「BP商事 鈴木」って社長?(ピッ)おはようございます。なんれすか~,しゃちょ~?
鈴木:おーい,丸ちゃん! 休みのところすまんが,サーバーに入れなくて困っているんじゃ。
丸山:また,パスワード間違えていませんかあ?
鈴木:そうじゃない! とにかく会社に出て来てくれ!!
土曜日だというのに,朝早くから呼び出された丸山さん。会社に着くと,早速状況を調べた。
鈴木:何度やってもダメなんだ。
丸山:ほんとだ,ドメインにログインできない。
鈴木:今日中に片付けなければならない仕事があって,急いでいるんだ。早く何とかしてくれたまえ。
丸山:はいっ,サーバーを調べてみます。あれ? わぁ~,サーバーが落ちている。それも肝心なActive Directoryのドメインコントローラが…。(汗!)
もともと,BP商事では,パソコンのファイル共用機能を使用した,「WORKGROUP」による簡易なWindowsネットワークを使っていた。ところが,ユーザーが増えたため管理が煩雑になった。そこで,Windows2003サーバーが稼働している1台のマシンを,ドメインを管理するサーバー(ドメインコントローラ)として設定し,ユーザー情報やネットワーク資源などを一元管理するActive Directoryを導入した。
しかし,管理が1台に集中するということは,そこに障害が発生するとネットワーク全体が止まる恐れがある。今回の鈴木社長のようにドメインにログオンできなくなり,システムをまったく使えなくなってしまうのだ(図2)。
図2●1台しかないドメインコントローラがダウンするとシステム全体が利用できなくなる こうした事態を避けるためには,別のWindows 2003サーバーにドメインコントローラの機能を持たせてバックアップすればよい。 [画像のクリックで拡大表示] |
丸山さんが,あたふたしているところへ,山田君が出社してきた。
山田:おはよおぉ! サーバー落っこちたって?
丸山:そうなのよ。ハードウエアの障害みたい。保守会社も土曜日は休みだし。
山田:どれどれ。買ってからまだ1年たたないから,ハード・ディスクが壊れる訳もないし。あれ,やけにケースが熱いな。もしかしたら…。
丸山:わっ,ほこりだらけ! 通風用の穴がほこりで目詰まりしてるわ。
山田:やっぱし! 丸ちゃん,掃除機。
山田君はサーバーを掃除したあと,うちわでパタパタと風を送り,CPUを冷やし始めた。しばらくして,電源を入れると,何事もなく正常にWindowsサーバーが立ち上がった。
丸山:掃除しただけでなおったの?
山田:こまめに掃除していないからよ。サーバーの通風孔がほこりだらけ。これじゃCPUが冷えないよな。