丸山さんはBP商事にシステム担当要員として採用された“自称”システム管理者である。丸山さんは,友人である進藤さんの助けを借りてシステムの運用にチャレンジしている。新規事業の立ち上げに向けて,サーバー追加などの業務をこなしてきた,そんなある日…。

鈴木:丸ちゃん。ちょっといいかな。

丸山:はい,社長。なんですか。

鈴木:中途採用で入ってくる人の件なんだが…。

丸山:6月から来る緑川さんですね。

鈴木:そうだ。入社してすぐにシステムを使えるようしておいて欲しいんだ。

丸山:了解しました。ユーザー・アカウントとサーバーのアクセス権を設定しておきます。ところで,山田君は…。

鈴木:1週間前に,中国の内陸部まで足を伸ばすというメールがあったきり連絡なしだ…。気になるのか?

丸山:いえ,その…。新規事業部の担当は山田君,いえ山田特命係長ですし,緑川さんの面倒は誰が…。

鈴木:ああ,そうだな。山田が帰国するまでは私が面倒を見ることにしよう。

 丸山さんは,5台あるサーバーに緑川さんのユーザー・アカウントを一つひとつ登録していった(図1)。

図1●緑川さんの入社に合わせて丸山さんはアカウントを追加した
図1●緑川さんの入社に合わせて丸山さんはアカウントを追加した
5台のサーバーに同じような情報を追加するのは手間がかかって大変だった。

丸山:ええっと。アカウントを追加して…。5台もサーバーがあると,同じ設定を何度もしなくちゃいけなくて面倒ね。

 現在のBP商事のWindowsネットワークはワークグループで使用している。ワークグループはDOS時代からあるネットワーク機能で,小規模向けに各サーバーごとにユーザー情報を管理する。そのため,サーバーの台数が増えてくると,同じユーザーの登録をサーバーごとに繰り返さなければならず,管理者にとっては面倒な管理作業が増えてくる。

 そして,緑川さんの入社当日…。

鈴木:おお~い,丸ちゃん。緑川くんがサーバーにアクセスできないぞ?

丸山:そんなはずは…。すぐに調べます。

 緑川さんが1台のサーバーの共有フォルダにアクセスできない現象が出ていた。そこで,丸山さんはサーバーの設定状態を1台ずつ調査した。

丸山:ええっと…。問題のサーバーはBP-Server02で,ユーザー・アカウントが緑川さんね…。5台もあると設定の確認も大変ね。あっ,新規事業部グループへ所属させるのを忘れているわ(図2)。

図2●うっかり1台のサーバーで設定を忘れてしまったためサーバーが利用できなかった
図2●うっかり1台のサーバーで設定を忘れてしまったためサーバーが利用できなかった
各サーバーで個別にユーザー情報を管理するのではなく,まとめて一元的に管理するActive Directoryの導入を進藤さんに勧められた。
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 丸山さんは,1台のサーバーで緑川さんのアカウントを新規事業部グループへ所属させる設定をうっかり忘れていた。設定を正しく変更したら,トラブルはたちまち解決した。

 その夜,進藤さんとの食事会で当然この話題になった。