NETWORK調査隊

 「ユニファイド・コミュニケーションのデモが面白かったです!」。ある展示会の取材から戻ってきた若手記者が私にこう報告してきた。「確かにデモは見てて楽しいよ。でも実際にはどうかなあ。必要な企業ユーザーは限られると思うけど」とそっけなく返す私に記者は黙り込んでしまった。

 「そんな単純な話じゃないぞ」。沈黙を破るかのように編集長が話を始めた。「ユニファイド・コミュニケーションを必要としている企業がいても,導入やその後の運用管理の問題で二の足を踏んでいるんじゃないかな。例えば今IP電話を利用している企業が,パソコンのソフトフォンやビデオ会議を組み合わせてユニファイド・コミュニケーションを導入しようとしたとき,ネットワーク・インフラに何らかのケアが必要になるはずだ。

 よし,今度の『ネットワーク最前線』のテーマはユニファイド・コミュニケーションでいこう。早速,ネットワーク機器ベンダーにどんなデモができるか当たってみてくれ」──。

 こうして今回もNETWORK調査隊の活動が始まった。

「ユニファイド」とは何ぞや?

 調査に入る前に,ユニファイド・コミュニケーションについて簡単にまとめておこう。ユニファイド・コミュニケーションとは,電話,メール,インスタント・メッセンジャ(IM),ビデオ会議,Web会議といった複数のコミュニケーション手段をIPにより複合的に連携させ融合させたシステムのこと。

 いかにも便利そうなシステムだが,これをいままで使ってきたネットワーク・インフラの上で実現するのは簡単ではない。単に既存のネットワーク環境の上に,ソフトをインストールしたサーバーとクライアントを接続して利用するだけでは,いろいろと問題が発生する恐れがある(図1)。というのも,大量のデータが飛び交うLAN環境やWAN回線を介して,トラフィック量の多いビデオ会議やQoS(quality of service)に敏感なIP電話などを同時に利用することになるからだ。さらに,既に利用しているさまざまなコミュニケーション・ツールと連携させたり,入れ替え/切り替えたりする必要がでてくる。

ユニファイド・コミュニケーションを支えるネットワーク機器
図1●ユニファイド・コミュニケーションを支えるネットワーク機器
多種多様なデータが大量に飛び交うため,ネットワーク・インフラ側でもケアが必要となる。
[画像のクリックで拡大表示]

 このようなユニファイド・コミュニケーション・システムを構築する際には,ネットワーク機器の手助けが必要になるはずだ。そう確信して最初の取材先へと向かった。