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何だったの? Warner騒動

2008/01/21
中田 敦=ITpro

 1月第2週の「2008 International CES」期間中,業界の耳目を一身に集めたのは米国の大手映画会社Warner Bros.による「Blu-rayへの一本化」だった。しかしそれから1週間が経ち,Warnerの選択が持つ意味は一気に陳腐化した。米Appleが「iTunes Movie Rentals」を発表し,低価格でHD(高精細)動画を配信することを明らかにしたからだ。

 iTunes Movie Rentalsでは,DVDレベルの画質(SD画質)なら,新作の映画を1本3.99ドルで,旧作の映画は1本2.99ドルで「レンタル」できる。次世代DVD並みの画質(HD画質)でも,レンタル料金はそれぞれ1ドルずつ高くなるだけだ。あくまでレンタルなので,動画はダウンロードから30日以内に視聴し,しかも1度再生を始めてからは24時間以内に見終わらなければならない。それでも,「音楽は何度も聴くので所有が向いているが,映画は1度だけ見ることが多いので,レンタルが向いている」とAppleのCEO(最高経営責任者)であるSteve Jobs氏が語るように,レンタルは普及の妨げにはならないだろう(関連記事:動画で見る「パソコン要らずのAppleTV」)。

 iTunes Movie Rentalsの安さは明確だ。米国で販売される映画DVDの中心価格は10〜15ドルと日本よりもかなり安いが,2.99ドルまたは3.99ドルというiTunes Movie Rentalsの価格には及ばない。HDになると,その価格差はさらに大きくなる。米国で販売されるBlu-rayやHD DVDの映画タイトルは,中心価格が25ドルとまだ高いからだ(それでも日本より圧倒的に安い)。

 iTunes Movie Rentalsの画質は720pであり,Blu-rayやHD DVDの1080p(最高の場合で)には及ばないが,5分の1以下という価格の違いは大きい。そしてiTunes Movie Rentalsを薄型テレビに映し出すハードウエア,つまりApple TVの価格も,229ドルとお手ごろである(2007年末には米Wal-MartがHD DVDプレイヤを99ドルで販売したが,現時点でのHD DVDプレイヤの価格は149〜299ドルである)。

全映画会社がiTunes Movie Rentalsを支持

 それでも,筆者がiTunes Movie Rentalsで衝撃を受けたのは,実は価格ではない。筆者が一番驚いたのは,サービス発表の時点で,ハリウッドの全大手映画スタジオが,iTunes Movie Rentalsを支持したことである。Appleとほぼ一心同体と言えるThe Walt Disney Studiosだけではない。20th Century Fox,Warner Bros.,Paramount,Universal Studios Home Entertainment,Sony Pictures Entertainment,Metro-Goldwyn-Mayer(MGM)が,iTunes Movie Rentalsをそろって支持したのだ。

 この現実を目の前にすると,「Warner騒動とは一体なんだったのか」と思わざるを得ない。次世代DVDを巡っては,ソニーを中心とするBlu-ray陣営と,東芝を中心とするHD DVD陣営が,あの手この手で映画会社の囲い込みにしのぎを削ってきた。今回,Blu-ray陣営がWarnerを引き込んだことで,「囲い込み戦争」の勝利に大きく近づいたといわれている。

 しかしその勝利に,どの程度の意味があるのだろうか。一方のiTunes Movie Rentalsには,全ての映画スタジオが揃っている。もちろん,開始当初のiTunes Movie Rentalsで入手できるHDタイトルは100本に限られており,タイトルの数はBlu-rayにもHD DVDにも及ばない。しかしiTunes Movie Rentalsなら,「Blu-rayを選べばParamountが見られなくなる」「HD DVDを選べばWarnerやSonyが見られなくなる」といった不愉快さとは無縁だ。映画スタジオの選択肢という点で,「最強のHDフォーマット」が登場したと言える。

 筆者は2年前,2006年の「Macworld Expo」に際して,「AppleがHD動画配信に参入する」との予測記事を書いた。その当時は「Appleが単独で,HD動画配信のフレームワークを構築するのは難しいのではないか」と考えていた。しかしAppleは,ハードウエア(Apple TV)からサービス(iTunes Movie Rentals)まで,全て1社で提供する方針だ。「世界中の薄型テレビにApple TVを据え付ける」という覚悟を決めたのなら,筆者は素直に「見くびっていました」と脱帽せざるを得ない(関連記事:Jobs氏の講演終了とともに膝から崩れ落ちる)。

>>ソニーはどうしたの?
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