インターネットは,基本的な通信インフラとして多くの国・地域で普及している。

 図1に,世界各国・地域でのインターネット接続サービスの加入者数と利用者数を示した。加入者数は,実際の回線の契約数である。利用者数は,その回線を利用してインターネットにアクセスしているユーザーの推定数である。ほとんどの国で,利用者数が加入者数の2~10倍になっている。つまり,一つの回線を多数のユーザーが共有して使っていることになる。

図1●インターネットの加入者数とユーザーの概数
図1●インターネットの加入者数とユーザーの概数
日本ITU協会の「World ICT Visual Data Book 2007」のデータから作成。
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 インターネット接続サービスの普及率は,アジア・オセアニアではばらつきが大きい。ヨーロッパはばらつきが小さく,全般的に高い。こうした傾向は,固定電話や携帯電話と同じ。特に普及率が高いのは,日本,オーストラリア,韓国,オランダ,スウェーデン,ノルウェー,米国といった国々だ。これらの国は「インターネット大国」と呼べるだろう。

 一方,インド,インドネシア,フィリピン,イラン,ケニアは,まだインターネット接続サービスの普及率が低く,本格的な普及はこれからということになる。

普及が進むブロードバンド回線

 インターネット接続の回線には多くの種類があるが,世界全体で見るとアナログ電話回線やISDN回線を利用したダイヤルアップ接続がまだ主流だ(図2)。

図2●インターネット接続のアクセス回線の比率
図2●インターネット接続のアクセス回線の比率
FTTHは「その他のブロードバンド回線」に含まれる。OECDの「OECD Communications Outlook 2007」のデータから作成。

 とはいえブロードバンド回線も徐々に整備されつつある。図2に挙げた国のほとんどは,インターネット接続回線の大半にブロードバンド回線を利用する。日本と韓国のブロードバンド回線の普及率の高さが目に留まる。日本や韓国に比べると,欧州や北米の国々はダイヤルアップ回線が多い。

 ブロードバンド回線の内訳を見ると,主流はADSLである。特にアジアとヨーロッパでその比率が高い。日本や韓国では,インターネット接続回線の半数がADSLを占める。

 ADSLに続いて,CATVの割合が高い。ただし,CATVがインターネット接続に利用されている国・地域と,そうではない国・地域がある。ADSLで利用する電話回線は,普及率の高低に違いはあるものの,どの国・地域でも敷設されている。しかし,CATVのインフラはどの国・地域でも整っているとは限らないからだ。特にCATVインターネットが利用されているのは,英国,オランダ,米国など。米国では,ADSLよりもCATVインターネットの比率が高い。

 FTTH は,日本,韓国,イタリア,スウェーデンで普及が進んでいる。他の国・地域では,これから普及を進めていく段階である。

固定のアクセス回線でも無線が活躍

 インターネット接続用の固定回線として,無線を活用している国・地域もある。電話線の敷設にかかるコストを省けるというメリットがあるからだ。

 固定回線用の無線方式として最近よく使われるのはWiMAX である。韓国,モンゴル,アイルランド,ロシア,カナダでは,既にWiMAXによるインターネット接続サービスが提供されている。

 このほか,携帯電話によるデータ通信手段を固定のブロードバンド回線に使う例もある。例えば,ロシアやベトナムでは,cdma2000で基地局とボックス型の宅内装置を接続してブロードバンド回線として利用するサービスが提供されている。また,ケニアではWiMAXやGSM/EDGE,cdma2000 1xEV-DOなどを使って,都市周辺の農村にインターネット接続回線を提供する計画がある。

 珍しいところでは,アイルランドで衛星通信がブロードバンドの固定回線として利用されている。

地域で異なるブロードバンドの定義

 ブロードバンド回線は一般に,「ダイヤルアップ接続と違う方式を使った高速回線」という意味で使われている。ところが,その内容を見ていくと,実は国・地域によって“ブロードバンド”の基準が大きく異なっていることが分かる。

 日本では,下りの伝送速度が数Mビット/秒以上の回線をブロードバンド回線と呼ぶのが一般的だ。ところが,ヨーロッパでは512kビット/秒以上がブロードバンドという認識だ。さらに,インドでは政府の公式見解として,256kビット/秒以上の回線をブロードバンドと呼ぶ。現地でサービスを利用する際に注意すべき点だ。

 ブロードバンド回線で利用できる最大伝送速度も,各国ごとにばらつきがある。図3は,2006年12月時点における,各国の主要な通信事業者が提供するブロードバンド回線サービスの最大伝送速度を比較したものだ。FTTHサービスをいち早く開始した日本や韓国では,100Mビット/秒という圧倒的な伝送速度を享受できる。

図3●ブロードバンド回線の下り側の最大速度
図3●ブロードバンド回線の下り側の最大速度
各国の支配的な通信事業者のサービスで比較。速度は2006年12月の値。OECDの「OECD Communications Outlook 2007」のデータから作成。

 その他の国・地域は,ADSLが主体であるため,最大伝送速度は2M~24Mビット/秒である。その中でも,8Mビット/秒以下のサービスが主流となっている。