3G携帯電話は,「W-CDMA」と「cdma2000」という2種類の方式が使われている(図1)。3G携帯電話は元々「IMT-2000」と呼ばれ,その開発目的の一つが世界共通の携帯電話方式を実現することだった。しかし,2G携帯電話がGSMというデファクト・スタンダードで統一された一方で,3G携帯電話は二つの方式に分裂してしまった。

図1●主な携帯電話方式の比較
図1●主な携帯電話方式の比較
世界中のほとんどの地域で使われているGSMは,各地域ごとに様々な帯域で利用されている。3GのW-CDMAとcdma2000は,当初は世界共通の2GHz帯を使うことを目指していたが,各地域の事情で異なる帯域が割り当てられている。

 W-CDMAは,GSMをベースにCDMA技術を取り入れた方式。GSMを導入済みのところは,W-CDMAを導入する傾向がある。cdma2000の仕様は,cdmaOneとほぼ同じで,北米を中心に採用されている。W-CDMAとcdma2000の両方を利用できる国・地域もあるが,ヨーロッパの主要国が3Gとして採用するのはW-CDMAのみ。ヨーロッパではGSMが前提なので,端末はGSMとW-CDMAを搭載したデュアル・モードになる。

 いち早くサービスがスタートした日本では,3G携帯電話は既に主要な方式となっている。他の国・地域では3Gの普及はこれからだ。ただし,本誌で取り上げた主要都市では,3G携帯電話がかなり普及している。

 さらに最近は,3G携帯電話の高速化仕様によるデータ通信サービスが始まっている。

 W-CDMAでは「HSDPA」という仕様で,下りの伝送速度が最大で約14.4Mビット/秒になる。現在提供されているサービスの伝送速度は,3.6Mビット/秒もしくは7.2Mビット/秒である。日本や韓国のほか,台湾,香港,アラブ首長国連邦,アイルランド,イタリア,英国,オーストラリア,スウェーデン,ノルウェー,フランス,米国などが導入している。

 cdma2000では「1xEV-DO」という仕様で,下りの最大伝送速度が約2.4M~3.1Mビット/秒になる。日本のほか,チェコ,ノルウェー,米国などが導入している。

 HSDPAや1xEV-DOは最大伝送速度が高速なだけではなく,周波数帯域の利用効率が高く,低コストの運用がしやすいという技術的特徴を持っている。このため,いくつかの国・地域では,HSDPAや1xEV-DOを利用したパソコン向けの定額接続サービスが始まっている。

都市ごとに特色のある多彩な料金体系

 携帯電話で各国・地域ごとに特徴が出るのは,料金体系だ。具体的な料金プランを見るとそれぞれ特色があって興味深い。

 多くの国・地域で1分当たりの料金が一定のプランが一般的である。だが,最初の一定時間の通話は月額基本料に含まれ,それ以降が従量課金となるプランもある。韓国,ヨーロッパ諸国,米国で提供されている。逆に,初めの1分の通話料金が高く,2分以降が低く設定してあるプランは,中国やロシアなどで提供されている。

 こうした料金体系の特徴は,ユーザーの携帯電話の年間利用料の内訳からも分かる(図2)。例えば,日本はデータ通信の定額サービスが発達しているので,基本料と通話料だけがかかり,メッセージ料(SMSやマルチメディア・データ付きメールなどの料金)の占める割合が非常に小さい。米国の場合は日本とは逆。最初の7.5時間の通話が無料なので,通話料がかからない。

図2●平均的なユーザーの携帯電話年間利用料
図2●平均的なユーザーの携帯電話年間利用料
平均的なユーザーの年間利用料の比較。OECDの「OECD Communications Outlook 2007」のデータから作成。極端なライト・ユーザーやヘビー・ユーザー,プリペイドのプランは除いてある。