PCサーバー分野を中心に、省電力化を図る動きが活発になってきた。

 省電力化の手段は、省電力型のプロセサを利用することに加え、電源ユニットや冷却ファン、ハードディスク・ドライブ(HDD)、メモリーなど、サーバーを構成するあらゆる部品を省電力対応のものに切り替えることだ(図2)。「サーバーの消費電力のうちプロセサが使っているのは3分の1程度。残りは、種々の部品によるもの」(日本IBM システム製品事業の藤本司郎氏)だけに、各部品を少しずつ省電力化することにより、全体の消費電力を下げる。

図2●サーバーについては、内部の部品それぞれについて省電力化する動きがある
図2●サーバーについては、内部の部品それぞれについて省電力化する動きがある

 独自の省電力対策を打った製品も登場している。例えば、NECが昨年9月から出荷している「Express5800/i110R-1h」シリーズは、冷却が容易なように設計したきょう体を採用する。具体的には、奥行きを355ミリメートルに縮め、1Uスペースのラックの正面と裏面に合計2台を搭載できる(写真1)。2台のサーバーの間に排気ルートを確保することで、空気を効率的に循環させる。消費電力を、「従来製品の3分の1に削減できる」(ITプラットフォーム販売推進本部の泓 宏優グループマネージャー)という。

写真1●NECはブレードの奥行きを短くし、通気性を高めた
写真1●NECはブレードの奥行きを短くし、通気性を高めた

 日立が10月末から出荷する新ラインアップ「HA8000-es」は、SAS(シリアル・アタッチSCSI)インタフェースを持つ2.5インチ型HDDの採用によって消費電力を抑える。「エコロジーサーバ」と呼ぶ。第二サーバ本部製品統括部の松本和裕部長は、「SASの2.5インチ型HDDの信頼性が、ようやくサーバーで使用できるレベルになった」と話す。

 富士通は小型サーバーの「TX120」に、2.5インチ型HDDを採用した。加えて、温度に応じて回転数を調整する「Pulse Width Modulation」と呼ぶ冷却ファンを搭載することで、同等性能の製品よりも消費電力を39%削減できたとしている。

 一方で、省電力よりも性能を求めるユーザーがまだまだ多いのも事実。日立の松本部長は、「サーバーは今後、性能を重視した製品と省電力を重視した製品とに、二極化していくだろう」と話す。

 ブレード・サーバーなど集積度が高いサーバーは、これまでもベンダーが独自に冷却ファンや電源ユニット部を開発してきた。そのブレード・サーバーでは、プロセサの負荷に応じて供給電力を増減させる機能の搭載が進む。NEC「SygmaSystemCenter」や日本IBMの「BladeCenter」、日本HP(ヒューレット・パッカード)の「BladeSystem」が同機能を持つ。

 ストレージ製品も同様の省電力対応が進む。「MAID(Massive Array of Inactive Disks)」の採用である。アクセスが少ないデータをバックアップ用のディスクに待避させ、そのディスクの電源を切ったり回転数を落としたりすることで消費電力を削減する。NECの泓マネージャーは、「最大で30%の消費電力削減が見込める」と話す。

 省電力化のニーズは、1U(ユニット)サーバーやエントリ・クラスの製品にまで広がっている。富士通の武居正善PCサーバ事業部プロジェクト部長によれば、「価格重視のなかでは、どのベンダーも“標準品”を使い似通った製品を作ってきた。だが、消費電力削減に向けては、部品を独自開発できる余地が残されている」。

 さらに日本HPは、先のプロセサ負荷に応じて供給電力を増減させる機能を使って消費電力を削減した割合に応じてサーバーの従量課金サービスの利用料金を割り引く「CO2削減インセンティブプログラム」の提供を07年9月に開始した。

 コモディティ(日用品)化が進んでいたPCサーバー分野で再び、各社が独自の技術力を競うだけでなく、関連サービス面での競争も始まりそうだ。