NTTグループは,これまで三つのサービスに分かれていた映像配信事業を統合する。NGN(次世代ネットワーク)商用化に合わせて,2008年3 月にぷららネットワークスにサービスを集約する方向で動き始めた。しかし2007年12月中旬現在で決定事項は少なく,統合に向けて道半ばといったところだ。

 Bフレッツなど光ファイバのユーザーを対象とするIP系映像配信サービスは,ぷららネットワークスの「4th MEDIA」,オン・デマンド・ティービーの「オンデマンドTV」,NTTコミュニケーションズの「OCNシアター」の3種類がNTTグループ内にある。それぞれ微妙にサービス内容が異なるため,ユーザーはどのサービスを選ぶべきか分かりづらい状況が続いていた。

 ビジネス的にも「三つのサービスを合計しても27万程度の加入者しかいない」(NTTグループの映像系サービスを統括するNTTコミュニケーションズの有馬彰代表取締役副社長ネットビジネス事業本部長)と苦しい状態だった。

 これらのサービスは,2005年11月に統合する方針だけが明らかにされていた。それから2年が経過した2007年11月になって,ようやく3サービスをぷららネットワークスに集約することが決まった。ここまで時間がかかった理由は,ぷららやオン・デマンド・ティービーには,NTTグループ以外の株主が含まれるため,関係各社との調整に手間がかかったからだ。

図1●3サービス統合で映像配信事業をテコ入れするNTTグループ
図1●3サービス統合で映像配信事業をテコ入れするNTTグループ
2年ほど前から筋書きはできていたが,NGN商用化目前を控えた2007年11月になってようやく,既存3サービスをぷららに集約する方針が固まった。地上デジタル放送のIP再送信や新サービスの追加で, 伸びが鈍化したBフレッツのテコ入れと,NGN展開をドライブする材料にしたい考えだ。
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ビジネスを軌道に乗せられるか

 発表から1カ月が過ぎた2007年12月中旬時点でも固まっている項目は少ない。有馬副社長は「他の株主の意向もあり,調整に時間がかかっている。各社で利用しているプラットフォームが違うことも影響している」と事情を打ち明ける。NGNの加入者に地上デジタル放送のIP同時再送信を提供することや,複数契約の割引サービスなどを追加することが決まっている程度だ。

 NTTグループは,NGNの商用サービス開始が2008年3月に迫っている一方で,光ファイバ加入者の伸び鈍化にも直面している。大容量が伝送できる光ファイバの魅力を訴求するために,映像配信サービスのテコ入れが欠かせない状況だ。そこで地上デジタル放送のIP同時再送信などを追加することで映像配信サービスを強化。新たなドライブ材料にしたい考えを見せる。

 ただサービス強化に伴って,負担も増える。例えばIP再送信を提供するには各県域単位に再送信設備が必要になり,投資コストは莫大になる。KDDIの試算では再送信設備に全国で数百億円の費用がかかるという。有馬副社長は「投資負担が重いのは確か」(有馬副社長)と認める。

 IP再送信はNGNサービスの加入者のうち,ぷららが提供する映像配信サービスに契約したユーザーが視聴できる。「IP再送信は映像配信サービスの月額基本料金に含む形になるだろう」(有馬副社長)と,IP再送信だけで料金を取らない考えを示した。「有料VODサービスなど映像サービスにユーザーを誘導してビジネスを成立させる」(同)狙いがあるという。

 有馬副社長は,「今後は見逃した番組を視聴できるサービスやブロードバンドの双方向性を生かしたサービスなど,CATVに対して競争力のあるサービスを追加していきたい」と語る。Bフレッツの伸びが鈍化した今,NTTグループが映像配信サービスにかける期待は大きい。NGNの開始が目前に迫った今, NTTコムに残された時間は少ない。 (堀越 功)