楽天やニフティ,カカクコムなど国内でもRuby採用の大規模事例が相次いだ。その理由はRuby on Railsがもたらす生産性の高さ。2007年12月にリリースされた新版1.9では処理性能が向上した。今後の課題は大規模システムでの人材確保とノウハウの蓄積にある。(聞き手は安井 晴海=ITpro

2007年はRubyがビジネス分野で普及しました。

高橋 楽天のパーソナライズ・サービスmyRakutenや,ニフティの年表サービスTimeline,プロフィール・サービスのアバウトミーなど大企業による採用が目立ちました。カカクコムの食べログは月間利用者約380万人のサイトです。米国のミニメッセージSNSのTwitterは最大秒間1万1000以上のリクエストがあるそうです。

半数以上が「仕事で使った」「仕事で使ってみたい」
半数以上が「仕事で使った」「仕事で使ってみたい」
仕事でのRuby利用経験と,利用意向について,Rubyを,少なくとも名前は知っているという読者に回答してもらった(有効回答=1203)

矢崎 Sun MicrosystemsとMicrosoftもRubyに取り組んでいます。JavaのVM上でRubyを動かすJRubyというソフトがあるのですが,Sunはその開発者を雇ってフルタイムでJRubyを作らせています。Microsoftも,自社のいくつかのフレームワーク上でRubyを動かせるIronRubyを公開しました。

高橋 Rubyの技術者を認定する資格試験も始まりました。主催は,まつもとゆきひろ氏が理事長を務める「Rubyアソシエーション」です。

 地域振興のためにRubyを活用する動きもあります。まつもと氏が住んでいる松江市では,Rubyを核にIT産業の活性化をはかるRuby City Matsueプロジェクトを進めています。福岡では地元企業が県とも協力しRubyのノウハウを共有するRubyビジネス・コモンズが設立されました。

 ITpro読者1万人アンケートでも,Rubyを知っている読者の4.8%が,Rubyを仕事で使ったことがあり,51%が使ってみたいと答えています。

 ちなみに仕事ではなくプライベートでRubyを使ったことがあるという回答は12.3%。プライベートで使ってみたいという回答は53%です。

Rubyの用途は「構築」と「運用」
Rubyの用途は「構築」と「運用」
仕事でのRubyの用途(複数回答)。利用経験がある読者と利用してみたいという読者に回答してもらった(有効回答=673)。
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矢崎 Rubyができたのは93年2月です。公開したのが95年の12月でもう12年経っています。

 ここへ来てRubyが広まったのは,2004年7月に出たRuby on RailsというWebアプリケーション・フレームワークの存在が大きいですね。あわせて言語としてのRubyも注目されています。

矢崎 茂明(日経ソフトウエア記者,写真左)/ 高橋 信頼(ITpro副編集長,写真右)
矢崎 茂明(日経ソフトウエア記者,写真左)/ 高橋 信頼(ITpro副編集長,写真右)

高橋 Ruby on Railsを作ったのは,David Heinemeier Hanssonというデンマーク出身の技術者で,今は,カナダに住んでいます。なぜRubyを使ったんですか,と彼に聞いたら「美しいプログラムを書けるから」と。

 Rubyは,最先端のものをつくる人の琴線に触れる言語なんですね。

矢崎 そういう意味では,まつもとさんが自分が使いたいものをRubyという形にして,それを評価した人がまたRailsというものを作ったという,良い連鎖が結びついた,とても幸せなケースですね。

 Rubyという言語は最も近代的といえると思うんです。今,現実的に利用されている言語の中では。例えば,コンパイルなしで使えるところや,オブジェクト指向のような抽象的な概念を素直に使いやすくしたり,ハッシュのようなデータ構造だったり。今の言語を一通り知っているプログラマが,こうだったらいいなと思う仕様が集まっています。