2008年3月にNTTがNGN(Next Generation Network)サービスを開始する。企業向けのサービス内容はまだ不明な部分が多いが,セキュリティやSDP(Service Delivery Platform)といったアプリケーションの開発,実行基盤は今後のNGNの可能性を期待させる。(聞き手は小松原 健=ITpro

「NGNとは何?」と聞かれたら?

中井 基本は,通信事業者が古くなった電話交換機を置き換えて,IP化を進めてコストを下げようとした結果がNGN。それで,固定も携帯もIPネットワークに統合して,サービスを提供しようとしています。

 そのうえで,さまざまなサービスを検討しています。固定,携帯といったアクセス回線を問わないサービス,帯域を保証したサービスなどを,セキュリティを確保したネットワーク上で提供しようと進めています。

 注目すべき点としてSDP(Service Delivery Platform)があります。ネットワークの機能をアプリケーションから使えるようにするもので,通信事業者はもちろん,サードパーティも使えるようになります。

市嶋 NGNというと先進的なサービスのイメージがあります。しかし,この1年間くらいは,NGNは通信事業者が設備を更新するという文脈でとらえておいた方がいいのかなと思います。

 といいますのは,いわゆる2007年問題によって,既存の交換機を開発,運用していた人たちが退職していきます。そのあと,通信事業者がネットワーク・システムを次の時代に引き継ぐため,IPネットワークに置き換えるわけです。

 ここまでは,通信事業者の勝手ですが,その先にあるサービス,アプリケーションに注目しています。

中井 新しい設備に置き換えると同時に,今まで電話やインターネットではできなかったような付加価値を提供していこうというのがNGNです。

付加価値,NGNの魅力がわかりやすいのはトライアルですね。

中井 NGNフィールド・トライアルは,企業や一般家庭に実際のNGN回線を引き込んで使ってもらう実証実験です。NTTが東京と大阪で2006年12月から2007年12月までの約1年間実施しました。このトライアルで企業と家庭,社会生活向けのサービスのシステムをいろいろ試しました。

 その中でNGNの特徴として活用されているのがセキュリティ,具体的には回線認証ですね。NGNでは,接続してきた相手の回線を識別する機能を備えています。ID/パスワードなどのユーザー認証と組み合わせて使えば,簡単にセキュリティの高いシステムが構築できます。ネットワークを介してシステムにアクセスする際に電話番号だけで認証という形態も取れます。

 あと,多いのは映像系のサービスです。ハイビジョンの等身大の映像を使ってテレビ会議ができるようになります。単にきれいなだけじゃなくて,画質が安定します。

フィールド・トライアルで利用されたCisco Systemsの超高品質テレビ会議システム「Cisco TelePresence」
フィールド・トライアルで利用されたCisco Systemsの超高品質テレビ会議システム「Cisco TelePresence」

ユーザーはその程度で満足しますか。

中井 ハイビジョンの映像,それからテレビ電話もそうなんですけど,実際にNGNを使うと映像や音声がやはりきれいなんです。1回そういうものを体験すると,元に戻りたくないと思う人が多いようです。だからそういう体験ができる場が,もっと必要じゃないかなと思います。