2007年はITベンダー各社が省電力プロジェクトを発表し, “決意表明”を行った。2008 年は,省電力サーバーの投入やサーバー統合など,「リアルな省電力」に向けて動き出す。こうした状況を踏まえ,グリーンITをウォッチしている記者の座談会を開催した。(聞き手は高木 邦子=ITpro

2007年は,経産省がIT機器やデバイスの省電力技術に取り組む「グリーンITプロジェクト」を立ち上げるなど,グリーンITが始動した年と言えそうです。そこで,「グリーンIT」という言葉が一般にどれくらい浸透しているかを探るために,アンケート調査を行いました。その結果,「ここ1年の間にグリーンITという言葉をよく聞く」と「ときどき聞く」という回答の合計が48.6%と,ほぼ半数に達していました。

渡辺 第一印象としては,まだまだ一般の認知が足りていないかなと思いますね。

森重 2007年の段階でいうと,ベンダー主導で啓蒙が始まったという感じがします。ITproの読者で半数というのは,妥当な数だと思いますよ。2007年はベンダーが「グリーンITをやるぞ」とこぶしを振り上げたフェーズで,これから製品投入が増えて来るでしょうから,ユーザーにも浸透してくると思います。

きっかけはサーバーの電力問題

ITproでは,グリーンITに関しては3つの方向から情報を発信しています。1つは,IT機器の電力消費量の削減に関するもの,2つめはITを利用することで産業構造やビジネスを変革し,資源エネルギー効率(環境効率)を高めるというアプローチ。例えば,遠隔ビデオ会議システムなどのソリューションでCO2削減を図ることが相当します。そして3つめは,IT機器の3R(リデュース,リユース,リサイクル)に関する情報です。

 今回の調査では,「グリーンITの意味をどうとらえているか」についても聞きましたが,グリーンITと言えば省電力,というのが一般的な認識のようです。

「グリーンITとは,サーバーの省電力のこと」という回答が73.2%
「グリーンITとは,サーバーの省電力のこと」という回答が73.2%
ITproの読者を対象に「グリーンITの意味をどうとらえているか」を聞いた(2つまで回答可,有効回答=1662)。「グリーンITとは,サーバーなどIT機器の省電力」という認識が一般的であることがわかった。
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福田 今,最も困っているのがサーバーの電力問題だということでしょう。特に都市部では相当ひっ迫した状況にあるようです。逆に省電力をアピールするようなデータセンターの事例が出始めています。

渡辺 以前から,グリーンITというキーワードこそ使わなかったけれど,データセンター事業者の中には「環境に対する取り組み」に積極的なところがありました。夜間電力を使った空調設備を入れるとか,細々とした対策はあったわけです。それがここに来て,サーバーの電力消費量は増える一方で,深刻な電力不足に直面することになったわけです。

森重 実際のところ,IT業界は電力問題をこれまでそんなに意識してなかったと思います。そこに,経産省はIT機器の電力消費量が2006年の500億kWhに対して,2025年には5倍,2050年には12倍になるという予測を出してきました。以前から製造業などは業界で目標値を作ってCO2削減に取り組んでいます。産業界が一致して温暖化対策に動く中,「次はIT」というのが見えてきたということでしょう。

福田 サーバーを預かっているデータセンター事業者が「電力が大変だ」と騒ぎ出したので,預けているユーザーの方まで影響が出始めているようです。同じ場所にサーバーを置きたいのに「もう電力がありません」と言われるとかです。特に大量のサーバーを持っている人たちの危機感は強いようですね。もっと冷房を入れようとか,サーバー統合しようとか,ホスティングに切り替えようとか,対策を検討し始めています。