基本姿勢

 いまさらながら、となるかもしれないが、そもそもウェブサイトは誰のためにつくるのだろう?

 そう、対象とする顧客に向けて、顧客のためになるように企画し設計する。

 ウェブのコンテンツが従来のコンテンツと大きく違うのは、小説やドラマなどは、ほとんど最初から最後まで読まれたり、見られたりすることが当たり前なのに比べて、ウェブのコンテンツは、最後まで読まれたり、見られたりすることが非常に少ないというところに大きな特徴がある。

 これは、ログの解析をすれば分かることでもあるが、インデックスから入ってきた、あるいは検索エンジンから来たお客様は、そのコンテンツを最後まで吸収理解しないまま離脱するケースが多い。

 これは何を意味しているのだろうか。

 顧客が期待した内容と大きくかけ離れているのか、ナビゲーションが不適切であったか? そのほかにも考えられることは数多くあるだろう。

 このようなケースが多発している場合、簡単な方法がある。自分が顧客になって見てみるとよいのだ。

 送り手という概念を無くして、言葉の使い方や、ナビゲーション、表記の表現(ラべリング)、アイコンやリンクの位置など、顧客になりきって操作してみるとよいだろう。もっとも、コンテンツの中身自体が意味のない?ものであれば仕方がないが。

 常にこのような視点で検証することでかなりの不具合が解消されるはずだ。最近はいろんなチェックサービスも流行っているが、企画設計時にこのような簡単な検証をしっかりやっておくだけで、結果が大きく違ってくる。

 そして、行ったことを毎回ドキュメント化し、スタッフと共有できるようにしておく。このことは、最終的なコスト削減やユーザビリティーの向上、ひいてはブランドイメージの向上にもつながるだろう。

顧客視点

 このように、顧客の視点で設計し、判断基準とすることはシンプルではあるが、非常に重要なことであることを認識したほういがいい。

 決して送り手側の理論で物事を判断すべきではない。

 特にナビゲーションに関しては、サイト全体での一貫性が必要だ。コンテンツが変わっても、ドメインが変わっても同じサイト内であれば一貫性が必要だ。多少のデザインの違いは許容範囲かもしれないが、考え方や作法を大きく変えてはならないだろう。元に戻れなくなったり、どこにいるのか分からなくなるというのは最悪のパターンであろう。ここまでくると、顧客はコンテンツに行き着く前に疲れ果て離脱していくだろう。

 ネットワーク環境にも左右されるが、適切なファイルサイズとウェブフロントで動作するアプリケーションの吟味も必要だ。ブロードバンド時代になって久しいが、その反面、意外とファイルやアプリケーションの重さを気にしていないと思われるコンテンツに遭遇することがある。これも、コンテンツの中身の情報を正しく顧客へ伝えられない要因にもなっているケースが多い。

 ここ数年、かなりの比率の顧客が検索エンジン経由でダイレクトにコンテンツの途中から入ってくるケースが多くなっている。そのため、どんなに深い階層のページからでも、そのサイト内すべてに移動できなければならないし、情報の構造を一般的な言葉で理解していただき、ナビゲートできなければならない。

 この間約8秒くらいだろうか?情報の海に投げ出されている顧客をこの時間内で適切にナビゲートできなければ、せっかく用意されているコンテンツもなんの役にもたたなくなってしまう。この領域は Landing Page Optimization と呼ばれているが、このあたりも腰を据えて取り組むべきであろう。

 ウェブが一般化し、普通のツールとしてより多くの方々に当たり前のように簡便に利用されているがうえに、どうも、サイト自体の構造やナビゲーションが顧客視点で考えられていないサイトも目に付くようになってきた。

 逆に、きちっと考えられているサイトは、より満足度が高く評価されるという現象を生み出すが、ウェブ全体の満足度向上のためには、多くのサイトが顧客視点で企画、判断をおこないながら制作、構築していただくことを切望する。

 冒頭にも述べたように、難しいものでもなんでもなく、作り手が顧客の視点になりきればいいのである。

 この場に及んで、顧客の視点がわからないとは言わないでいただきたい。