2008年は環境問題への取り組みが本格化する年になりそうだ。京都議定書の約束期間がいよいよ始まり,テレビや新聞で,毎日のように環境問題が取り上げられている。また,7月に開催される北海道・洞爺湖サミットでは,環境問題が大きなテーマになっている。日本企業は,これまで以上に環境対策に力を入れることが求められるようになるだろう。

 IT業界も,環境対策への気運が高まっている。大手ITベンダーが2007年後半から相次いで,二酸化炭素(CO2)排出量削減に本腰を入れ始めた。政府も,経済産業省が主導するIT機器の省エネ計画「グリーンITプロジェクト」に着手するなど,力を入れている。

 その一方で見えてこないのは,企業の情報システム部門はどのように環境対策に取り組めばよいか,である。

目の色を変えるITベンダー

 ITベンダーが製品やサービスについて環境対策を強化し,それをアピールするのは,昨今の環境問題への関心の高まりを踏まえれば,当然かもしれない。火付け役は米IBM。5月にデータセンターの省エネ計画「Project Big Green」を発表している。米HPや米デル,米サン・マイクロシステムズなども,プロジェクト名を公表しているわけではないものの,製品の省電力化に力を入れている。

 日本のベンダーも10月から12月にかけて,省電力計画やサービスを次々と発表した。日立製作所の「CoolCenter50」と「Harmonius Greenプラン」,NECの「REAL IT COOL PROJECT」,富士通の「Green Policy Innovation」,NTTデータの「グリーンデータセンタ」などがそうだ。主要ベンダーそろい踏みの感さえある。

 目の色を変えて省電力化に動くITベンダーの動きに,製品やサービスを利用する立場にある情報システム部門は,どう臨むべきなのか。環境分野は,これまでの情報システム部門にとって必ずしも関係が強い分野とはいえないだけに,何が求められているのか,今ひとつピンとこない担当者が多いのではないだろうか。

ユーザーにとってのメリットを明確に

 それでも,電力消費量の増加に困っている企業なら,省電力型ハードウエアの導入や,データセンターの省電力化を検討する価値はあるだろう。環境配慮型のハードウエアやサービスがいくら登場しても,それをユーザーが利用しないのであれば,実効性は低い。ユーザーによる環境配慮型製品・サービスを利用する前向きな姿勢があって初めて,CO2排出量削減につながる。

 ベンダー側も,製品の環境配慮がどれだけ進んだかを誇示するだけではなく,それを利用するユーザーにどのようなメリットがあるかを具体的に示すことが重要なのではないか。

 その1つが,運用コストの削減効果である。IT機器のほとんどは電力駆動である。消費電力を削減することは,CO2などの温室効果ガス排出量を削減するとともに,電力料金を含む運用コストの削減にもつながる。環境対策などと難しいことを考えなくても,省エネ化による運用コスト削減と考えればよい。日経SYSTEMSの記事によると,省電力型サーバーへの投資は1年で回収できるケースもあるという(関連記事)。

 こういったデータをITベンダーが積極的に提示すれば,情報システムの省電力化はさらに進むはずだ。ITベンダー各社は,サーバーやストレージの省電力化を急速に進めている。今後5年で30%~50%の電力削減が可能だと言い切るベンダーもいるほどだ。電力料金が上昇している折でもある。本当にこれだけ省電力化が進むのであれば,情報システム部門にとって省電力製品を導入しないことは,運用コスト削減を怠ることに直結する。

 情報システム部門には,ITベンダーの省電力化の取り組みが自社の運用コスト削減にどう貢献できるかを見極める力が求められる。これが,情報システム部門の環境対策の第一歩ではないか。

 政府も省電力型製品の採用を促進するための税制優遇措置などを早急に検討するべきだ。企業はハードウエアを3年~5年使用することを前提としているケースが多い。しかし,京都議定書の約束期間が終わる2012年は,すぐそこに迫っている。