写真14 改善活動に取り組む中心メンバーたち
写真14 改善活動に取り組む中心メンバーたち
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 車載通信機器などを製造・販売するヨコオが、日本での成功体験をもとに中国でトヨタ流改善を始めたのは2006年。その中心人物である多胡 一男氏に、取り組みの詳細をほぼリアルタイムでメルマガに寄稿してもらった。1年前の話ではあるが、現地に改善活動を根づかせるためには何が課題となるのかなど、中国で改善に取り組もうとする企業にとっては大いに参考になるだろう(日経情報ストラテジー編集部)。

多胡 一男
東莞友華汽車配件有限公司(ヨコオの中国法人) OJT-Sプロジェクト 経理担当


 皆さん、こんにちは。中国からの第14回となります。
(原文は2007年6月20日付け日経情報ストラテジー・メール)

 「ものづくりカイゼン日記 in中国」も今回と次回で、ひと区切りつけさせていただくこととなりました。そこで残り2回は今回のカイゼン活動にかかわっていただいた関係者のコメントを交えながらお届けします。

■カイゼン活動

【1】活動の概要

現場カイゼングループ
 生産現場カイゼンチームは5製品それぞれに「5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)」「標準作業」「見える化」でカイゼン活動を展開しています。特に第3期から活動を開始した「車載TV用ダイバシティーアンテナ(以下DIV)などを担当するG4グループ」は作業者と管理者に対して、「5Sの重要性」「ものづくりの基本的考え方」の勉強会を進めています。ただ、季節変動が激しく昼夜生産をしていることから、全員が受講するには6月いっぱいかかりそうです。今、何がそこにあるのかが見える職場にすべく、整理・整頓と表示に主眼をおいて活動しています。

物流カイゼングループ
 G1(マイクロアンテナ)では中国内のサプライヤーとの「納入指示かんばん」の拡大を図っています。ここでは友華汽車の生産管理部と協業しながら説明会を開き、まずは「かんばん」の勉強会を繰り返し行ない、6月後半から各サプライヤーの代表部品から試行が開始されます。

 G2(GPSアンテナ)・G3(中継コード)の「部品引取り指示かんばん」は準備段階から試行段階へと進み、主要部品から始まりました。いかにして「かんばん」方式を現場の人に伝え、「物が見える」「作業を単純化する」ことを理解してもらうか、日々のフォローとカイゼンの重要性について専任メンバーに毎日言い続けています。

【2】OJT-S(トヨタ生産方式に基づく職場改善・人材育成)プロジェクトからの卒業

 友華汽車の組織強化として、GPSグループでOJT-Sを展開してくれた何課長と江副課長を、現場へ戻すことにしました。2人には今まで学び経験したことを生かし「作業者にやさしい」「物が良く見える」職場を作ってほしい、とお願いして送り出しました。ほかのメンバーもいずれ卒業する日が来ると思いますが、「広い視野で現場を観察し、問題発見から改善活動を自ら実行できる」人材へ育てるのが、私の課題と認識しています。

■関係者からのコメント

佐藤次長 <日本ヨコオOJT-S プロジェクト責任者>
 日本でもまだ指導を受けている最中での中国展開だったので、「無謀では?」とは思ったのですが、結果的に成功でした。メンバーと現場が積極的に改善を進め、モデル職場を構築することが出来ました。まだまだやることはありますが、地道な改善が継続されていくことと確信しています。

ゾウSPM(サブプロダクトマネージャー) <モデル職場ローカル責任者>
 2006年からOJT-Sに接し、人材育成の大切さや仕事の進める方法などを学び、現在はSPMとして 職場全体のレベルアップを図っています。効果が大きかったのは管理者・作業者のカイゼン意識向上で、絶えず問題を見つけカイゼンを進めています。今まで少なかったGPSアンテナのカイゼン提案は毎月15件前後出るようになり、職場全体にOJT-Sの思想が浸透してきています。今後は職場管理の見える化を更に進めていきます。

 筆者自身も、最初は中国でOJT-Sが受け入れられるのか半信半疑でしたが、1年たって少しづつではあるが着実にOJT-Sが定着していることを日々実感しています。

では、今回はこの辺で。


多胡 一男(たご かずお)
1981年、株式会社ヨコオ(車載通信機器・無線通信機器などの製造・販売)入社。2006年6月より同社中国工場である東莞友華汽車配件有限公司にてOJT-Sプロジェクト 経理担当。ヨコオでは、人事部門にて、人事システム革新テーマ等に取り組む。その後、車載通信機器生産部門責任者に就任。2004年には韓国での合弁会社の製造立ち上げ責任者として駐在。2005年からはOJT-Sプロジェクト(トヨタ生産方式に基づく職場改善・人材育成プロジェクト)に参画し、製造現場のものづくりシステム改善に取り組み、現在同社中国工場への展開で奮闘している。同社のWebサイトはこちら