写真13 現地リーダである曾副総経理(左)と社長職にあたる清水総経理(右)
写真13 現地リーダである曾副総経理(左)と社長職にあたる清水総経理(右)
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 車載通信機器などを製造・販売するヨコオが、日本での成功体験をもとに中国でトヨタ流改善を始めたのは2006年。その中心人物である多胡 一男氏に、取り組みの詳細をほぼリアルタイムでメルマガに寄稿してもらった。1年前の話ではあるが、現地に改善活動を根づかせるためには何が課題となるのかなど、中国で改善に取り組もうとする企業にとっては大いに参考になるだろう(日経情報ストラテジー編集部)。

多胡 一男
東莞友華汽車配件有限公司(ヨコオの中国法人) OJT-Sプロジェクト 経理担当


 皆さん、こんにちは。中国からの第13回となります。
(原文は2007年5月23日付け日経情報ストラテジー・メール)

 4月から友華汽車での第3期活動をスタートさせました。第3期はローカルメンバーが学んできたことを活用し、各リーダーの下で個別テーマに対し責任を持って推進できるようになるという育成計画も、目的の1つに加えた活動計画にしました。また、4月後半に第2期の総括として友華汽車の係長以上を対象に活動報告会を開催しましたので、その時の様子も報告します。

 今回から対象製品(職場)が1つ加わりましたので、ここでその友華汽車製造部を説明します。主要製品を4つのグループに分け、それぞれ日本人責任者(以下PM:プロダクトマネジャー)とローカル幹部(以下SPM:サブプロダクトマネジャー)を配し、生産計画から品質までを一括管理しています。第3期から今まで未着手だった車載TV用ダイバシティーアンテナ(以下DIV)などを担当するG4グループへ、OJT-S(トヨタ生産方式に基づく職場改善・人材育成)を展開していきます。

■カイゼン活動

【1】活動の概要

G1(マイクロアンテナ)
 新規立ち上げ製品の標準化をメインに、5Sをはじめとする活動は現場主体で進めてもらいます。このグループは前回も触れましたが、管理者にOJT-Sが浸透してきており、「決められたことを決められた通りに実行する」ことが定着しています。あとは日々のカイゼン活動(作業者が同じリズムで作業が出来る環境整備)を継続できるようにフォローしていきます。このグループには成形工程も含まれており、成形材の保管方法、完成品の一時置き場への運搬カイゼンに取り組んでいます。

G2(GPSアンテナ、その他)
 2期に引き続きの活動となり能率管理の定着と品質安定のため、工程内の不安定要素の排除に取り組んでいます。また、作業者に対して「異常時の対応」を教育していますが、まだ浸透しきれていない状態で何をどう教えることが身につく近道なのか少々悩んでいます。

G3(中継コード)
 ケーブルの端末加工の工程の標準化とPMの強い要望を受け、現場管理者への「物づくりの考え方」「工程を管理する上での基礎」など教育に力を入れていきます。OJT-SのリーダーとSPMがタッグを組み管理水準の向上を図っています。

G4(DIV、その他)
 DIVのほかにも3製品を担当していますが、出荷量の多いDIVの標準化と品質安定を中心に展開を開始しました。この製品は自動車メーカーのライン装着と違い、春先の新規モデル発表やボーナス商戦に影響され生産数が急激に変化するため、作業者の増減が激しいなか、いかにして作業を安定させるかも課題の1つです。

物流カイゼングループ
 第2期までは前記の各カイゼングループの活動の1つでしたが、今回から独立したグループ活動としてG1・G2・G3の倉庫在庫の見える化から各種「かんばん」導入を始めています。日本人リーダーの下、若手メンバーが主体となって「かんばん」の理解を深めながら、現場で使いやすい仕組みづくりを進めています。日本からの支援は2期から継続し、月1回のペースで担当者を招いて進ちょくの確認と課題解決のアドバイスをもらっています。

【2】第2期活動報告会

 4月21日に友華汽車の係長以上を対象に、2回に分けて2期の活動報告会を開催しました。4人のリーダーが活動内容をまとめる過程で「聞き手の理解を得られる資料づくり」をコンセプトに進め、それをメンバーが学び取ることを狙いましたが、目的や定量的な効果確認など吸収することは無限にありそうです。

■赴任生活

寮の部屋替え

 4月初めに帰国者があり、寮の部屋を1階から2階に引っ越ししました。一端生活を始めると結構荷物があるもので、30回近く往復し荷物を運び込みました。ベランダも広く眺めもまぁまぁ良く、快適な暮らしができそうです。その日の晩は、武田くんと日本料理屋でそばを食べ、ささやかなお祝いをしました。このところ、日本料理を食べることが増えています。

では、今回はこの辺で。


多胡 一男(たご かずお)
1981年、株式会社ヨコオ(車載通信機器・無線通信機器などの製造・販売)入社。2006年6月より同社中国工場である東莞友華汽車配件有限公司にてOJT-Sプロジェクト 経理担当。ヨコオでは、人事部門にて、人事システム革新テーマ等に取り組む。その後、車載通信機器生産部門責任者に就任。2004年には韓国での合弁会社の製造立ち上げ責任者として駐在。2005年からはOJT-Sプロジェクト(トヨタ生産方式に基づく職場改善・人材育成プロジェクト)に参画し、製造現場のものづくりシステム改善に取り組み、現在同社中国工場への展開で奮闘している。同社のWebサイトはこちら