◆今回の注目NEWS◆

◎社会保険オンラインシステム最適化評価ワーキンググループの設置について(IT戦略本部 、2007年12月4日)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/densihyouka/syaho-online/konkyo.html

【ニュースの概要】電子政府評価委員会の中に「社会保険オンラインシステム最適化評価ワーキンググループ」が設置された。「ITガバナンスの強化、年金記録の管理にとって適切かつ効率的なシステム開発など、年金記録問題検証委員会報告書の新システム構築に向けた指摘事項への対応状況についての点検・評価」などを行う。


◆このNEWSのツボ◆

 12月4日に、電子政府評価委員会の中に、適切な年金記録管理とITガバナンスのための評価委員会が設置されることが発表された。ちょうど、この1週間後に、いわゆる「消えた年金データ 5000万件のうち4割近くが特定不能」との発表が行われたことを考えれば、皮肉と言えば皮肉なタイミングである。

 年金は、言ってみれば、国が国民からお金を預かり(=負債)、将来、これを還付する…という仕組みであるから、年金システムは、社会保険・国民年金に関する債権債務管理システムのようなものである。この債権債務を司るシステムにおいて、1億2000万人の全国民に関するデータについて、5000万件もの不明データが存在すると言うこと自体が、通常であればあり得ないことで、これが民間銀行で発生した事件であれば、おそらくその銀行は、金融庁によって「お取りつぶし」になるだろう。

 そういった意味で、このシステムをどうするか…ということが、首相お膝元の内閣府において検討が開始されることは悪いことではない。しかし、今回の年金データの例で明らかになったように、社会保険システムの問題は、その開発・運用に関わる問題だけではなく、管理する組織のあり方、職員の意識の持ち方や責任体制まで含めた、総合的なガバナンスの欠如に起因している。

◎関連:社会保険庁問題を検証する
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20071026/285606/?ST=govtech

 こうした経緯を踏まえれば、今回の検証・検討は、本当に「徹底的」なものであることが求められる。ぜひ、本格的な取り組みを期待したい。

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はフューチャーアーキテクト社長/COO、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。