早いもので2007年ももう終わり。この時期になると,毎年,海外メディアが早々と1年の重大ニュースをまとめるが,本コラムでもざっとこの1年のIT業界を振り返ってみたい。今年,業界全体に大きな影響を及ぼした米Appleと米Googleの動きを通して,2007年とはどんな年だったかを考えてみる。

絶好調の1年

 2007年は米Appleにとって大躍進の年となった。先ごろBusinessWeekが発表した「2007年の最も重要な製品」に同社製品が3つ入るなど,今年は新製品が相次いでヒットした。3つとは,ノートパソコンの「MacBook Pro」,新OSの「Mac OS X version 10.5(Leopard)」,そして同社が今年新規投入した携帯電話「iPhone」だ。とりわけiPhoneは1年を通して話題が尽きることがなかった。米Googleの検索語ランキングでも今年最も上昇率が高かった検索語に挙げられるなど,iPhoneは2007年を象徴する製品,あるいは現象と言ってよいだろう。

 AppleがiPhoneを発表したのは1月。今年はこのiPhoneの話題で幕が開けたことになる。6月末に米国で販売開始してから,今日に至るまで人々の関心を集めている。販売開始後,突如として発表された大幅値下げ,ロック解除を巡る論争,キャリア間の摩擦など,何かと物議を醸したものの(関連記事:Appleの「iPhone」,欧州での展開に立ちふさがる障害),それでもiPhoneは売れ続けている。

 Appleは今年,携帯音楽/ビデオプレーヤ「iPod」シリーズの全面刷新も図っており,新たにiPhoneに似たユーザー・インタフェースを持つ「iPod touch」も市場投入した。これら製品の売れ行きも好調で,同社のパソコン売り上げに大きく貢献していると伝えられている。また新OSの「Leopard」は発売開始後1カ月の売り上げが過去最高を記録(Reutersの記事)。折しも今年はコンシューマ向けWindows Vistaが登場した年であるが,このVistaの人気が振るわず,WindowsユーザーがMacintoshに乗り換えているとも報じられている(internetnews.comの記事)。

波及効果でパソコンも好調

 確かに,Appleの7~9月期のパソコン販売台数は216万4000台となり四半期ベースで過去最高となった(関連記事:Appleの7~9月期決算,「Mac」「iPhone」好調で67%増益)。またiPhoneの販売台数は,9月末までの3カ月で138万9000台に達している。iPhoneはその後,英国,ドイツ,フランスでも販売が始まっており,この年末のホリデーシーズンを含む10~12月期には相当な数のiPhoneが世界で売れていると考えられる。具体的な数字を知るには,1月21日の決算発表を待たなければならないが,同社への期待は高まっている。Appleの株価は年初来約120%増と過去最高レベルに達した。投資家やアナリストの期待は非常に高いようだ。

 その最大の理由は,同社が携帯電話を「reinvent」(再発明/再定義)したこと。実はこの表現,iPhoneの発表時から,Seteve Jobs CEOが好んで使っているもので多少我田引水とも感じられる(Appleアップルの発表資料)。しかし海外メディアの論調を見ていると,やはりこの言葉でAppleを評価しているものが多い。

 例えばInfoWorldの記事では,Appleが再定義したのは,製品そのものではなく,携帯電話市場とまで言っている。「Apple IIによってIT市場を,Macintoshによってパーソナル・コンピュータ市場を再定義したAppleは,その後iPodを放ち,今度はそのiPodの機能を搭載したiPhoneで携帯電話の市場を変えた」---。こんな具合である。11月に発表されたTime誌の発明大賞でも同じような理由でiPhoneを高く評価している(関連記事:Time誌が今年の発明大賞に「iPhone」を選出)。

 このiPhoneに関する話題は2008年も尽きることがないようだ。Appleは2008年にアジア圏でiPhoneを発売すると発表しており,日本での展開も期待されている。事実この年末になって,Wall Street Journal(WSJ)が,「Appleが日本市場へのiPhoneの投入に関してNTTドコモと協議している」と伝えた(WSJの記事)。2008年はアジア市場でiPhoneブームが巻き起こるのかも知れない。

"GPhone"よりも「野心的」

 Apple同様,市場に新規参入し,携帯電話を再定義しようとしているのが米Googleである。今年,かねてからうわさされていた携帯電話「GPhone」は登場しなかったが,その代わり同社は,携帯電話に載せるLinuxベースのソフトウエア・プラットフォーム「Android」と,その活動推進の業界団体「Open Handset Alliance(OHA)」を発表した。無線周波数(700MHz帯)競売にも参加する。

 同社の目的は,世界中の開発者にアプリケーションを開発してもらうこと。これにより,さまざまなメーカー/通信事業者の携帯電話で,Androidという共通プラットフォーム上で動くアプリケーションがサポートされるようになる。同社のネット・サービスやアプリケーションを,機器や通信ネットワークに制限されることなく提供できるようにするというわけだ。

 これは言ってみれば,世界中の携帯電話を「GPhone」にしてしまうということで,Google会長兼CEOのEric Schmidt氏が言った「GPhoneよりも野心的」という表現もうなずける。確かに,同社自らが携帯電話機を手がけるよりもはるかに大きな野望。700MHz帯周波数の競売については,これを使ってどのようなサービスを展開していくつもりか同社は明らかにしてないが,もし同社が落札すれば,「Android」との相乗効果でモバイル市場に大きな変化がもたらされるのかもしれない。