「3K問題」という言葉があります。「きつい」「厳しい」「帰れない」の三つの「K」に総称される,我がIT業界に横たわる大問題です。働けど働けど暮らしが楽にならず,さらに怒涛のように襲い来る技術革新に必死にしがみつくように学ばなければ,やはり生き残っていけない,この状態を如実に,どこか自嘲気味に表している言葉だと言えます。

 この問題の深いところは,今の状況の悪さだけの問題でなく,次世代が育ってくれるのかという問題と,誰がなんと言おうと「IT」の必要性(社会の「システム」への依存度)がますます高まっている中,今以上の技術基盤を継続的に維持できるのかという問題をはらんでいる点です。

今年の付加価値は,来年の基本機能

 大ざっぱに言って,Javaが出てくる前までは,コンピュータ言語を習得した者は,担当した業務に習熟し,それは尊敬(リスペクト)されるべき蓄積されたスキルとして,少しの間は評価されてきたように思います。しかし,最近はその評価される期間が徐々に短くなっていきているように見えます。

 それは「IT」が解決すべき問題の質と量が大幅に変わってきたことが大きな原因だと思います。人的に処理すれば良かった問題を,システム的に解決しようという流れは,少し前とは比べ物にならないくらい大きなものになっています。

 そうした環境の変化を受け,IT業界の中での評価の仕組みも変わってきたのだと思います。一つの「解決法」を実装できたとしても,解決すべき問題が広くなっている分,その価値が相対的に下がっているのです。

 さらに,技術の陳腐化速度も高まっています。様々な技術や言語や方法が次々に生み出され,バージョンアップされます。より早く,より楽に,新しいコードが生産できるようになって行きます。今日の新発見は,明日の基本機能と言わんばかりの速度です。今日苦労して生み出したモノで,「食っていける」時間が徐々に短くなっています。

図1 今年の付加価値は,来年の基本機能

 これはプログラミング系の話だけではありません。マークアップエンジニア(主にHTML開発者)にとって,数年前の「CSS」の復興は衝撃的なものでした。Tableレイアウトと呼ばれた,小さな画像を挟み込んで,綺麗な表組みをする技術が一瞬にして時代遅れの技術となりました。もちろんTableレイアウトが悪い訳ではありませんが,JISに即しても全面的に勧められる方法ではなくなってしまいました。それはTableレイアウトが実装できれば「プロ」と呼ばれてた基準が崩れた瞬間です。