日経NETWORK 編集長 藤川 雅朗 |
「ネットワーク技術の面で2008年を予測せよ」とのお題をいただいたので,ここは一つ大胆な予測をしてみたいと思います。ズバリ,「2008年はIPv6がブレイクする」――。
「またか」という声が聞こえてきそうですが,これはかなり本気です。確かに,IPv6は「IPv4アドレスの枯渇問題」の解決策としてこれまで幾度となく取り上げられてきたものの,結局アドレスが枯渇しないので,その都度棚上げにされている技術です。
しかし,事情は2008年に大きく変わると見ています。といっても「IPv4アドレスが枯渇する」と言うのではありません(その可能性も否定できませんが)。利用環境が整い,アプリケーションやユーザー・ニーズがIPv6の普及を後押しすることになると見ます。
VistaとNGNで環境は整う
IPv6普及のトリガーの一つは,間違いなくWindows Vistaでしょう。Vistaでは,最初から標準でIPv6が動作します。意識的にIPv6スタックをインストールする必要はありません。これで,ユーザーがIPv6を利用するためのハードルがグッと下がりました。
2007年,パソコン・ベンダー各社が期待していたほどVistaによる好影響は見られませんでしたが,2008年にはじわじわと浸透していきます。これはIPv6にとって追い風となります。
もう一つの要因として取り上げられるべきは「NGN」(next generation network)でしょう。東西NTT地域会社は,首都圏および大阪府の一部で2008年3月までにサービスをスタートさせます。当初は“IP電話用のインフラ”という意味合いが強くなると思われるNGNですが,その潜在能力はIPv6を普及させる立場からすると魅力あるものになります。
NGNの特徴の一つに,複数のユーザーに同時にデータを配信できるマルチキャスト機能があります。このマルチキャスト機能は,IPv6を使って実現されるものです。地上デジタル放送の番組をNGN経由で流す「IP再送信」はマルチキャストを利用するので,IPv6の上で動くわけです。
もちろん,NGNだけがIPv6対応サービスではありません。インターネット接続や企業間を相互接続するVPN,動画配信のインフラ・サービスなど,すでに多くの通信サービスがIPv6対応として提供されています。
ニーズは多様化する自宅へのアクセス
環境が整っただけでは技術は普及しません。ただ,2007年を振り返ってみると,ユーザー・ニーズの面でもIPv6が求められるようになりそうです。
ネットワークについて知っておきたい情報を基礎からやさしく解説する。毎月28日発行 |
思い浮かぶのは,外出先から自宅のネットワーク上の機器へのアクセスです。普段使っているパソコンのほか,最近増えつつあるネットワーク家電へのアクセスでIPv6を使うわけです。
すでに,独自のサービスや技術で外出先から自宅のネットワーク上にある機器を操作しているユーザーも多くいるでしょう。ただし,ネット家電の種類が増え,機器別・ユーザー別にアクセス先を指定しようとすると,IPv4では無理が出ます。個々の機器にユニークなアドレスを割り振れるIPv6を使った製品が,2008年には多く登場すると予測します。
期待を込めてIPv6の行方を見ていきます。