日経ソフトウエア 編集長
田中 淳
日経ソフトウエア 編集長 田中 淳

 2008年,ソフトウエア開発/プログラミングの分野では企業や個人を問わず,「いかに効率よく開発するか」に引き続き関心が集まるとみられる。

 企業では,短期間で情報システムを開発あるいは刷新したいというニーズがますます強まるのは間違いない。特にWebを利用して新サービスを開始する場合は,企画からサービス開始まで数カ月というケースも珍しくない。

 こうした新サービスを支えるアプリケーションを,パッケージ・ソフトあるいはSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)だけで実現するのは困難で,プログラミングで作り込む作業が欠かせない。ソフトウエアの開発効率をいま以上に向上できる言語や開発ツールは,これまで以上に求められるようになるだろう。

企業分野でのRubyの普及が加速する

 こうしたニーズの高まりを受け,2008年に注目されそうな言語/開発ツールは様々ある。まず挙げておきたいのはRuby(ルビー)だ。

 Rubyはスクリプト言語,軽量言語(LL:Lightweight Language),動的言語などと呼ばれるプログラミング言語の一つ。Javaに比べて数倍から10倍近くと言われる開発生産性の高さに加えて,機能が豊富でかつ開発者にとっての楽しさや心地よさに配慮している,オープンソース・ソフトウエアで無償で利用できる,「Ruby on Rails」という強力なフレームワークが存在する,といった特徴を持つ。加えて,開発者が日本人のまつもとゆきひろ氏ということもあり,日本でも利用例は急速に増えつつある。

 2008年には,特にエンタープライズ・アプリケーションの分野でRubyの普及が加速しそうだ。というのも,Rubyはいまこの分野でよく使われている言語のJavaと相補的な関係にあるからである。基幹系の部分はJavaで作り,素早く作ることが要求される部分はRubyで作る,といった役割分担が進むとみられる。

 もう一つ,2008年に話題を呼びそうなのは,マイクロソフトの統合開発環境の最新版「Visual Studio 2008」だろう。無償版「Express Edition」の提供はすでに始まっており,パッケージ版は2008年2月に登場する。

VSの新版が3年ぶりに登場

 Visual Studioは,Windows用ソフトウエア開発ツールの定番。Visual Basic,C#,ASP .NET,C++などを使って,WindowsアプリケーションやWebアプリケーションを開発できるビジュアルな統合環境を提供する。

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 Visual Studio 2008では新機能として,ユーザー・インタフェースを構築するための技術「WPF(Windows Presentation Foundation)」用ツールやリッチ・クライアント実現手法のAjaxをASP .NETで利用可能にするライブラリ,データベースのテーブルやXMLファイルへのアクセス手段を統一する機能「LINQ(Language Integrated Query)」などを搭載。2008年には,これらを生かしたアプリケーションの構築事例が登場しそうだ。

 ほかに,マイクロソフトのSilverlightやアドビシステムズのAIR(Adobe Integrated Runtime)といったリッチ・クライアント技術や,Web APIを組み合わせたマッシュアップを実現するためのツールにも注目したい。