大画面テレビやBDレコーダーが爆発的に普及した2007年。一足先にハイビジョン化が進んでいたビデオカメラの市場は、今やハイビジョン一色となったといっても過言ではないだろう。各メーカーのハイビジョンビデオカメラのラインアップも広がり、ハイビジョンの解像度をフルに使ったフルHDモデルも増えてきた。

 ビデオカメラ市場の混乱もやや落ち着いてきた今年を振り返り、その傾向とこれからのトレンドを占ってみよう。

勢力図が大きく変化した2007年のビデオカメラ市場

 ハイビジョン画質は、SD(標準)画質と比べて4.5倍~6倍の情報量だ。しかし、記録する情報はMPEG形式で圧縮され、SD画質と同程度の容量で記録できるようになっている。従来の記録メディアでハイビジョン画質の記録をしても、同程度の録画時間が確保されているというのはスゴイことだ。DVカメラ時代、利便性が高いDVDカメラが登場したり、より大容量で長時間録画が可能なHDDモデルが登場したりと、記録メディアの多様化が目立った。これはハイビジョンビデオカメラになっても同様で、やはり記録メディアの選択が難しい状況になっている。

 ハイビジョンビデオカメラの先駆けとなったHDV方式はDV方式と互換性があり、ミニDVテープにSD画質と同程度の録画時間を実現している。DVカメラからの乗り換えユーザーにも、DV再生互換という従来のテープ資産を生かす使い方ができるため支持を受けた。

 しかしながらテープというメディアの特性上、重ね撮りの心配や頭出しや巻き戻しが不便ということもあり、ほかのメディアを採用したモデルに主役の座を明け渡してしまった。また、フルHD(1920×1080ドット)記録モデルが多い中、HDV方式の1440×1080ドットという解像度はユーザーへのアピールも弱いのだろう。現在はソニーとキヤノンでわずか数機種を残すのみとなってしまったが、ハイビジョンビデオカメラの先駆者としての役割は十分に果たしたと言えるだろう。

ソニーが2007年2月に発売したHDV方式ハイビジョンビデオカメラ「HDR-HC7」(実売価格10万9800円前後) キヤノンが2007年3月に発売したHDV方式ハイビジョンビデオカメラ「iVIS HV20」(実売価格8万8800円前後)
ソニーが2007年2月に発売したHDV方式ハイビジョンビデオカメラ「HDR-HC7」(実売価格10万9800円前後)
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キヤノンが2007年3月に発売したHDV方式ハイビジョンビデオカメラ「iVIS HV20」(実売価格8万8800円前後)
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 HDV方式を駆逐したのが、AVCHD方式だ。「MPEG-4 AVC/H.264」(単に「H.264」「MPEG-4 AVC」と呼ばれることも多い)という圧縮方式を採用し、MPEG-2の2倍以上の圧縮率で映像を記録するのが特徴だ。ワンセグ放送の映像コーデックや、PSP、iPodなどでも利用されていて応用範囲は広い。AVCHD方式はHDV方式と違ってフルHD記録も可能としているので、フルHDを表示する大画面テレビを購入したユーザーにとっては、その解像度を余すところなく楽しめるというところが受けているのだろう。

 また、記録メディアもDVDやHDD、メモリーカードといったランダムアクセスメディアに対応しているのもAVCHD方式の大きな特徴だ。テープ方式のような重ね撮りの心配や頭出し・巻き戻しの不便さから解放され、またたく間にHDV方式カメラのシェアを奪い取ってしまった。AVCHD方式カメラを率先していたのは松下電器産業、続いてソニーだった。今までかたくなにHDV方式にこだわっていたキヤノンも今年後半にAVCHD方式のカメラをリリースし、主要メーカー3社からAVCHD方式が出そろうこととなった。

キヤノンが2007年8月に発売した、40GB HDDを搭載する「iVIS HG10」(実売価格9万8000円前後) 松下電器が2007年9月に発売した、SD/SDHCカード記録タイプの「HDC-SD7」(実売価格10万円前後)
キヤノンが2007年8月に発売した、40GB HDDを搭載する「iVIS HG10」(実売価格9万8000円前後)
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松下電器が2007年9月に発売した、SD/SDHCカード記録タイプの「HDC-SD7」(実売価格10万円前後)
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キヤノンが2007年8月に発売した8cmDVD記録タイプの「iVIS HR10」(実売価格12万8000円前後) キヤノンが2007年8月に発売した8cmDVD記録タイプの「iVIS HR10」(実売価格12万8000円前後)
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 HDV方式やAVCHD方式ではない、独自方式を採用したハイビジョンビデオカメラの登場も目立った。といっても、圧縮形式はAVCHD方式と同じく「MPEG-4 AVC/H.264」を採用しているものが多い。中でも注目したいのが、東芝「gigashot」シリーズだ。HDDにフルHD記録可能な「Aシリーズ」と、1280×720ドットで記録するエントリーモデル「Kシリーズ」が用意されている。今まで、東芝「gigashot」というと「小型軽量のHDD記録MPEGカメラ」という印象が強かった。長い間新製品のリリースがなかったが、この秋ハイビジョン録画に対応した新製品を投入することでハイビジョンビデオカメラの市場に参入、ビデオカメラメーカーと肩を並べることになった。

東芝が2007年11月に発売したフルHD記録対応のHDD搭載カメラ「gigashot Aシリーズ」 東芝が2007年10月に発売した、エントリータイプのHDD搭載カメラ「gigashot Kシリーズ」
東芝が2007年11月に発売したフルHD記録対応のHDD搭載カメラ「gigashot Aシリーズ」。実売価格は100GB HDD搭載の「A100F」が16万8000円前後、40GB HDD搭載の「A40F」が12万8000円前後
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東芝が2007年10月に発売した、エントリータイプのHDD搭載カメラ「gigashot Kシリーズ」。実売価格は80GB HDD搭載の「K80H」が11万8000円前後、40GB HDD搭載の「K40H」が8万4000円前後
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