インドのITベンダー最大手6社“SWITCH”の「C」であるコグニザント・テクノソジー・ソリューションズは、1994年創業の比較的若い会社である。2006年度(12月期)に前年度比60.8%増の14億2400万ドルを売り上げるまでに成長した。SWITCH6社のうちで第5位の売り上げだ。コグニザントは本社こそ米国ニュージャージー州に置くが、実際のIT関連サービスの拠点はインドのチェンナイ(旧マドラス)にある。日本市場ではこれまで、外資系企業の日本拠点向けサービスに留まってきたものの、08年から日本市場に本格参入する。

信用情報最大手の情報システム部門が分社

 コグニザントは、世界最大の信用情報会社である米ダンアンドブラッドストリート(D&B)のシステム部門が独立したITベンダーである。94年の独立時の従業員数は175人で、売上高はわずか170万ドルだった。96年度から親会社以外へのITサービス提供を開始し、従業員数は575人、売上高は1200万ドルに伸びた。

日本支社の竹内友章日本代表。アップル・コンピュータ、サン・マイクロシステムズ、EDS(エレクトロニック・データ・システムズ)などを経て、07年から現職
写真●日本支社の竹内友章日本代表。アップル・コンピュータ、サン・マイクロシステムズ、EDS(エレクトロニック・データ・システムズ)などを経て、07年から現職

 そのコグニザントが成長軌道に乗る契機になったのが、西暦2000年(Y2K)問題だ。コグニザント日本支社の竹内友章日本代表によれば、「Y2K問題が持ち上がった頃から売り上げが伸びていった。どこの企業も開発者不足になり、大量に人員を動員できるのがインドだったからだ。インドに開発拠点を構えたことが賢明な選択だった」という。その後コグニザントは、年率30~60%で売上高を伸ばし続け、07年度の売上高は前年度比49%増の21億2500万ドル強、従業員数は約1万6000人増の5万5000人を見込んでいる。

 同社のオフショア開発センター(ODC)はインドに集中している。チェンナイ、コルカタ(旧カルカッタ)、バンガロール、プネ、ムンバイ(旧ボンベイ)、コインバトールの6カ所にODCはある。現時点でおよそ4万人の社員が働いており、9割がインド系だ。インド以外では、中国・上海と米アリゾナ州フェニックスにODCを構えている。

信頼と“カモノハシ”で差異化を図る

 コングニザントの受注スタイルは、業務コンサルティングから運用までの一括契約が中心だ。そのため、事業経験のある人材をコンサルタントとして雇い、彼らにITの知識を教育する。ソフト開発面では、CMMI(能力成熟度モデル統合)の最高位や品質管理の国際規格「ISO9001」を取得しているほか、独自のプロジェクトマネジメント・ツール「eCockpit」も導入している。生産性やメンバーの活動状況、品質情報といったプロジェクト状況や、個人ごとの目標や進捗度、キャッシュ・フローなどをグラフィックで表示できる仕組みだ。eCockpitが把握する情報はすべての顧客にも提供する。

 こうした取り組みの背景には、親会社D&Bの存在がある。竹内代表は、「(信用情報会社である)D&Bは、なによりも信頼を重視する会社だ。情報漏洩などは絶対に許されないし、許してこなかった。そのD&Bのシステムを開発・運用している実績が、金融機関や製薬会社などのトップ企業に受け入れられている」と話す。現時点の顧客数は世界で330社あり、「米国トップ10の銀行のうち6行と、世界トップ10の製薬会社のうち8社と、取引している」(同)という。

 SWITCHでは最後発となるコグニザントのもう1つの強みを、竹内代表は「米国とインドのいいとこ取りをしている点にある。ほ乳類でありながら鳥類やは虫類の特性を持つ“カモノハシ”のようなものだ」と説明する。具体的には、「TCSやインフォシス、ウィプロらとは異なり本社は米国にありながら、サービス拠点は同じくインド中心である」(竹内代表)ことだ。

 “カモノハシ”流によって、米国流のマネジメント体系と営業基盤を持ちながら、インドの高いIT力を生かす。このスタイルは、米IBMや米アクセンチュアらが今まさに構築しようとしているもの。竹内代表は、「カモノハシ流で、さらなるグローバル化を推し進める」と語る。