ジャパネットたかたのCIOを担当する吉田周一常務執行役員 |
通信販売大手のジャパネットたかた(長崎県佐世保市)が順調に業績を伸ばしている。2006年度(12月期)の売上高は1080億円で前年度比19.2%増と大きく伸びた。日経流通新聞が2007年10月17日に発表した「eショップ・通信販売調査」では、通信販売業の売上高ランキングで4位に位置し、3位とは僅差だった。2007年度は同5%増の1150億円を目指している。
同社でCIO(最高情報責任者)の役割を担うのが吉田周一常務執行役員。数万人規模の大手企業で九州地区の営業本部長を務めていたところを、2003年12月に代表取締役の高田明氏に請われて3人目の役員として入社した。ところが顧客名簿が流出していたことが発覚したため、同社は翌年の2004年3月に営業活動を自粛した。
そこで急きょ、CISO(最高情報セキュリティー責任者)になった高田代表取締役のもとで、信頼回復のため個人情報保護の体制を作ることに吉田常務は注力した。
さっそく吉田常務はBS7799(英国規格協会が策定した情報セキュリティーの運用管理対策に関する国家規格)の「スペシャリスト」認定資格を取る勉強を開始。2004年9月に合格した。
さらに、各種施策を実行した。システム室などの出入り管理のためにICカードによる認証を導入したり、監視カメラを設置したり、パソコンにパスワード付きのスクリーンセーバー、データ暗号化のツール、キー操作の記録ツールを導入したりするなどだ。さらには、社員がオフィスに持ち込める情報機器を制限して不定期にチェックするといった活動や、社内監査、社内のセキュリティー試験制度も吉田常務が中心になって立ち上げた。
抜き打ち検査といった性悪説的な施策を高田代表取締役は決して好まない人だという。「高田代表取締役の参謀」を自負する吉田常務は「厳しい施策を打ち出すのは自分の役割。高田代表取締役はそれを抑える役割でいてくれたらいい」と“悪役”を担う覚悟で施策を打ち出した。そんな吉田常務を高田代表取締役は「厳しい人だけど実は優しい人だよ」と社内でフォローした。
同年11月に営業再開した後も、2005年11月にはISMS(情報セキュリティーマネジメントシステム)認証を取得。こうして再発防止に誠実に取り組んでいったことが実り、2005年度の売上高は過去最高を更新した。
吉田常務が同社に転職を決めた最大の理由は、高田代表取締役の裏表のない人柄だったという。それだけに、普段のコミュニケーションも「本質をとらえた本音のコミュニケーションを心がけている」と話す。
その一方で、IT(情報技術)業界のプレゼンテーションには「やたらに横文字が多い」「もっと企業の求めるものをくみ取ってほしい」と苦言を呈している。
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■変更履歴 当初、高田明氏の肩書きを代表取締役社長または社長としていましたが、正しくは代表取締役でした。本文は修正済みです。 [2007/12/18 22:00] |