フルHDプロジェクターやHDオーディオ対応AVアンプが多数登場した2007年のオーディオ&ホームシアターの動向を、AV評論家の小原由夫氏が総括し、2008年を展望する。


身近になったフルHDプロジェクター~著しい低価格化と高画質化

 ホームシアターの主役は、間違いなく大画面映像である。フラットテレビも大画面化の動きが活発だが、フロントプロジェクターを使ったスクリーン投写が、やはりホームシアターの本命だ。

 フラットテレビは今やフルHDが当たり前になったが、フロントプロジェクターについても、2007年の各社の主力モデルはフルHD対応であった。しかも低価格化が著しい透過型液晶方式プロジェクターは、本体の実勢価格が30万円台と、非常に値頃感が出てきた。

 昨年までは720Pモデルのみのモデルラインナップだった三洋電機が、今秋のモデル「LP-Z2000」(メーカー希望小売価格:37万8000円)でフルHD市場に参入。エプソン、松下電器産業、三菱電機と相まみえた4社がシェア争いを繰り広げるという様相である。この中で三菱電機「LVP-HC6000」(価格:オープン、実売価格36万8000円前後)のみが、開口率の向上による黒浮きを懸念して一世代前のD6パネル(D6世代C2Fineパネル)を採用したが、そのほかの3機種は最新のD7パネル(D7世代C2Fineパネル)を採用している。このセイコーエプソン製D7パネルは、約20%の開口率アップと同時に、駆動回路が従来の10ビットから12ビットとなり、4倍の精度での映像信号処理が可能となった点がセールスポイントだ。

三洋電機が2007年11月に発売した「LP-Z2000」(メーカー希望小売価格:37万8000円) 三菱電機が2007年9月に発売した「LVP-HC6000」(価格:オープン、実売価格36万8000円前後)
三洋電機が2007年11月に発売した「LP-Z2000」(メーカー希望小売価格:37万8000円)
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三菱電機が2007年9月に発売した「LVP-HC6000」(価格:オープン、実売価格36万8000円前後)
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 松下電器「TH-AE2000」(価格:オープン、実売価格44万8000円前後)は昨年モデルのTH-AE1000に対し、絞り範囲をさらに広げたダイナミックアイリスを搭載。この種の機構ではもっともスムーズな動作を実現している。エプソン「EMP-TW2000」(価格:オープン、実売価格34万9800円前後)は適応型アイリスに頼らず、光学系に新技術「ディープブラックテクノロジー」を投入し、50000対1という驚異的なコントラスト比を実現した。

松下電器産業が2007年10月に発売した「TH-AE2000」(価格:オープン、実売価格44万8000円前後) エプソンが2007年11月に発売した「EMP-TW2000」(価格:オープン、実売価格34万9800円前後)
松下電器産業が2007年10月に発売した「TH-AE2000」(価格:オープン、実売価格44万8000円前後)
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エプソンが2007年11月に発売した「EMP-TW2000」(価格:オープン、実売価格34万9800円前後)
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 2008年の動向としては、いずれのモデルも同じセイコーエプソン製パネルを使っている以上、つまるところその技術的な進展次第であり、そこにいかに独自のフィーチャーを盛り込めるかが差別化の鍵となる。

 D7パネル採用機以外では、反射型液晶パネルを採用したソニーとビクターが熾烈(しれつ)な競争を繰り広げているが、2008年はニューカマーの参戦が期待されるところだ。