米ジンブラは12月,Webベースのコラボレーション・ツールの最新バージョン「Zimbra Collaboration Suite 5.0」(以下ZCS5.0)を発売する。日本では2008年上半期に発売予定だ。新たにオフライン環境での利用に対応。IMやボイス・メールといったコミュニケーション機能を追加するなどの強化を施した。

 ZCS5.0で加わった新機能の目玉は,オフライン対応である。一般にWebベースのアプリケーション・サービスは,ネットワークに接続しているときしか使えない弱点がある。オフライン対応はこれを補う仕組みだ。

 オフライン時でもユーザーがZCSを使えるように,米ジンブラは「Zimbra Desktop」と呼ぶパソコン用のJavaアプリケーションを新たに追加した。同社のスコット・ディッツェン代表兼CTOは,Zimbra Desktopについて「小規模なZCSのサーバーといえるもの。機能はサーバーとほぼ同じだが,データベース部分はサーバーより軽量なものを使っている」と説明する。

 オフライン時には,ユーザーはWebブラウザからローカルのZimbra Desktopにアクセスして,取得済みメールを読んだり,新規メールを書いたりすることができる。ネットワークにつながると,Zimbra DesktopがZCSと同期して,メール送受信などの処理をする。

ユニファイド・メッセージの要素も

 ZCS5.0では,コミュニケーションの手段も追加した。新たにIM(インスタント・メッセージ)を搭載。またボイスメール・システムなどと連携して,ボイス・メッセージを扱える(図1)。メール用画面に送信ユーザーのプレゼンスが表示されるなど,既存のコミュニケーション機能との統合も実現している。

図1●「Zimbra Collaboration Suite 5.0」の主な新機能
図1●「Zimbra Collaboration Suite 5.0」の主な新機能
オフライン環境への対応,IMやボイス・メールの搭載といった機能を加えている。
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 ユーザー向けの機能追加だけでなく,管理者向けのコンプライアンス対策機能も強化した。IMのチャットやメールのログは,サーバー側に保管してシステム管理者が検索できる。

 対応プラットフォームも追加した。ZCS5.0はBlackBerryに“ネイティブ”対応。ZCS5.0をBlackBerry Enterprise Server(BES)と連携させることで,ZCS5.0のメールやカレンダーのデータをBlackBerry端末にプッシュできるようになった。

ヤフー買収後も販売方法は同じ

 ZCS5.0の日本語版は,2008年上半期に発売予定である。ジンブラの国内事業化権を持つ住友商事がライセンス販売し,フィードパスがSaaSを手がける。今後,日本でZCSを扱う事業者は増える予定で,ネットマークスが2008年4月からSaaSとして提供すると発表。日立ソフトウェアエンジニアリングも取り扱いを検討中だ。

 米ジンブラは9月に米ヤフーによる買収が発表されており,現在は米ヤフーの一事業部門である。販売方法などは従来と変わらない。同種のサービスを提供する米グーグルや米マイクロソフトに対して,「(ジンブラは)ユーザーがホスティング(SaaS),ライセンス,オープンソースのいずれでも利用できるのが強み」(ディッツェンCTO)とし,引き続きユーザーの要望に応じた形態で提供していく。