シスコシステムズ合同会社は11月,同社のレイヤー3スイッチ「Catalyst 6500」向けの新しい冗長化技術「VSS」を発表した。ネットワーク設計と運用を複雑にしがちな冗長化プロトコルを一切使わない。冗長化の対象となる2台のレイヤー3スイッチをあたかも1台のスイッチであるかのように扱える点が新しい。
高い信頼性が求められる企業ネットワークでは,冗長化は必須となる。しかし,そのためにネットワークの設計や運用が複雑となり,管理者の頭を悩ませてきた。それに対する一つの回答が,シスコの開発したレイヤー3スイッチ向けの新しい冗長化技術「VSS」(virtual switching system)である。
複雑で無駄が多かった従来技術
企業ネットワークの冗長化に従来から使われてきた技術は,レイヤー2レベルの「STP」(spanning tree protocol)と,レイヤー3スイッチレベルの「VRRP」(virtual router redundancy protocol)および「HSRP」(hot standby router protocol)である。
STPを用いる場合は,バックアップ用としてイーサネットのリンクを余分に設けておき,正常時のリンクが切れたときに備える。VRRPとHSRPは,レイヤー3スイッチをバックアップ用としてもう1台用意し,障害時に動的に切り替える。
STP,VRRP,HSRPは,いずれもネットワークの設計や運用を複雑かつ難しくする。そのうえ,通常は利用しないポートやスイッチを用意しなければならず,投資に見合った性能を得られないという問題もあった。
2台のシャーシが1台のマシンになる
今回のVSSは,2台のシャーシを専用インタフェースでつなぎ,STP,VRRP,HSRPを除いた冗長化を実現する。外部からは,2台のシャーシが完全に1台のスイッチに見える。
シャーシにつないだ複数のリンクは,リンク・アグリゲーションで束ねられた1本のリンクとして動作するので,無駄がない。さらに,処理モジュールを従来品からVSS対応の製品に変えるだけでよく,その他のシャーシ,電源,ライン・カードはそのまま使い回せる。
VSSを利用するには,2台のスイッチともCatalyst 6500でなければならない。もっとも,このシングル・ベンダーという制限は一般的なVRRPにも見られたこと。今後,他のベンダーが追随し,VSSと同様のソリューションを提供するかもしれない。