Qript
代表取締役社長 CEO
渡邉 君人

インスタント・メッセージ(IM)はメッセージをやりとりするコミュニケーション・ツールである。簡単であるため、いろいろなことに使える。隣りの席の同僚とのやりとり、会議中に連絡を取ったり、在宅ワークの補完ツールに。

 実際の利用シーンにそった具体的な活用方法をみていこう。

近くの同僚や電話の相手とのやりとりにも有効

 IMは離れた相手とのメッセージ交換に利用されるというイメージが強いかもしれないが、すぐ近くの同僚との連絡にも有効だ。URLやメール・アドレスを間違いなく伝えられるし、ファイルの保存フォルダを教えたりファイルそのものを送信したりすることもできる。

 IMは電話と併用してもよく、相手と話をしながら情報のやりとりができる。また、電話中に別の人からメッセージが届いた場合に「今電話中なのでしばらく待ってください」などと返せば、メッセージを送った相手はほかの作業に集中できる。IMを活用すれば、お互い効率よく仕事を進められる。

会議にも活用できる

 社内に無線LANの設備を導入して、打ち合わせ場所でもノートPCを使えるようにした企業が増えてきた。このような環境であれば、会議中であっても、IMを使って「急ぎで資料を5部コピーしてA会議室に持ってきてくれる?」といった依頼や「○○案件の進ちょくはどうなった?」といった確認を、打ち合わせ中に席を外したり内線電話をかけたりすることなく、オフィスの在席者に投げかけることができる。ただし、大事な打ち合わせの場でノートPCばかりにかじりついているのはほかの参加者に対して失礼となるので、それなりの配慮は必要だ。

 また、会議前のすり合わせにもIMが有効だ。関係者でチャットを使って議題と方向性をおさらいしておけば議事はスムーズに運ぶだろう。IMならそういった「根回し」が悟られにくいという想定外のメリットもある。

総務・管理系のプッシュ型活用例

 「どのような業種の企業がIMをよく利用しますか?」といった質問をユーザー企業などからもらうことが多い。実際は同じ業種でも千差万別で、とくに傾向は見られない。しかし部署という観点で見ると、業種によらず人事・総務・経理部門や営業管理部門などが、IMのメリットを最も享受している部署のひとつのようだ。

 こういったセクションは、社員に対して経費清算書や勤怠表、発注書や請求書、日報や議事録などの書類の提出を催促することが多い。外出の多い営業マンや締め切りにはルーズな社員がいると、どうしても管理部門が「督促役」にならざるを得ないからだ。まずはメールで提出書類の締め切り日を告知する。締め切りが過ぎたあたりで、いよいよ管理側からIMを利用した個別アプローチが始まる。

 「すでにメールでご連絡しておりますが・・・」という導入から始まって「○○の書類がまだ提出されていません。締め切りは××日ですが、いつ提出していただけますか?」と切り出していく。IMで個別に攻められると、客先への提出書類の手配に忙しいさすがの営業マンも、「申し訳ありません。今日中に必ず提出します・・・(T_T)」ということになる。

 ファイルも添付できるため、とくに月中や月末に優先すべき事項や書類確認のやりとりには、電子メールのように埋もれてることがないIMが重宝されるという。プレゼンスからその時々のステータスも分かるため、「外出」から「オンライン」になった瞬間を狙ってメッセージを送るのも効果的なのだそうだ。

 もちろん、不在時にメッセージを送っておくこともできるが、あえて戻った瞬間にメッセージを送りつける。こうすると、受け手側は提出を待ってもらっているという負い目をより強く感じるらしい。このように書くと管理系の人たちはちょっと意地悪にも思えるが、もともとは書類を提出しないほうが悪いのだ。個々の状況を確認しつつ催促するのもなかなか大変な作業であることは理解してあげよう。

プレゼンスで上司をつかまえろ!

 プレゼンス機能を利用することで、いつも忙しくて席にいない上司をつかまえやすくなった、というメリットもあるという。上司と話をしたいのに、朝から会議や外出などのスケジュールがいっぱい。なんとか席にいる瞬間に狙おうと思って業務中にちょくちょく上司の席を確認しにいってもいつも空席・・・。

 こんな状態を経験されたことのある人は少なくないはずだ。そんなときにプレゼンス機能はかなり役に立つ。ある会社では、忙しい上司から承認を得るときには、プレゼンスが「オンライン」になった瞬間に承認依頼のメッセージを送るのが最も効果的であるという。「画面を注視し続けて、オンラインになった瞬間をとらえなければならないのでは?」と思うかもしれない。しかし、ステータスが変更されるとデスクトップ上に更新情報が表示されるため、仕事に集中していてもすぐに分かる。

 必要であれば即座に上司の席に行ってもいいし、メッセージを送ってもいい。メッセージは「至急ご確認お願いします」といったような緊急性を感じさせるタイトルを付け、不必要な情報は削ぎ落としてシンプルかつ的確に用件を伝えるようにする。できれば「はい/いいえ」で回答できるような流れにするとよいだろう。

 ある会社の社長や管理職などは、「私がプレゼンスをオンラインに変えた途端、ここぞとばかりにメッセージが送られてくるんです・・・」と、対応の大変さに悲鳴を上げているほどだ。もっとも、それらを処理するのも上司の仕事。なかなかコミュニケーションの時間が取れない部下にとっては、IMがあるお陰で上司との調整がスムーズになるはずだ。

安心して在宅ワーク

 IMの威力が発揮されるのは社内シーンだけではない。現在、大手企業を中心に広がりつつあるモバイルワークや在宅ワークなどに代表されるテレワークにおいても、今後必須のツールとなっていく模様だ。Qriptの製品を利用しているある企業にテレワークでの利用実態について話を聞いた。

 テレワークにはもちろん、セキュリティの課題のクリアや、管理体制の整備などが求められるが、何よりまずテレワークを「させる上司」と「する部下」との信頼関係が重要な要素であるという。しかし、いくら信頼している部下であっても、一日中目の届かないところで仕事をしていれば、やはり「ちゃんと仕事しているのだろうか」と一抹の不安を抱くことになる。

 そこで、社外や自宅で仕事をする社員の管理方法として、PC用ビデオカメラで仕事をしている様子を監視する、または、一定時間ごとに仕事の進ちょく状況を報告させる、などの案が出たという。しかし、最終的にはメッセンジャーを利用することになった。お互いにストレスを感じることなく、存在を確認できることが一番のメリットなのだという。

 たとえば、在宅者は自宅での仕事が続くと疎外感を感じると言われているが、プレゼンス機能によって社内スタッフの状況が分かるだけでも連帯感が得られる。一方、管理する側の上司も、自宅という本来はプライベートな空間にいる社員に電話で連絡を取りたいときに「いま電話しても大丈夫かな・・・」とどうしても気を遣ってしまうらしい。とくに女性社員に対しては遠慮がちになるという。そんなときにもプレゼンス機能が役立つという。

 同社によると、「電話と電子メールさえあればテレワークはできないことはない。しかし、IMがあることでお互いの仕事がやりやすくなるのであれば導入すべきと判断した。事実そのとおりの効果があった」という。

こっそり助け舟

 IMが持つ「即時性」を活用したケースもある。通信販売のコンタクトセンターでの利用例である。オペレータは自社商品について十分な知識を有しているし、解約などの一般的な手続きについてもきちんと案内ができるようにトレーニングされている。しかし、顧客からの電話の中には複雑な処理を伴うものやクレームに発展しそうなものもある。そのときは、スーパーバイザー(オペレータの取りまとめ者)との密接な連携が欠かせない。

 このセンターではスーパーバイザーがオペレータのグループごとに顧客との会話をモニタリングしている。対応に困っているオペレータがいると、IMを利用して、たとえば「返品は大丈夫って伝えて」といった指示を出している。またオペレータ自身も、込み入った話になった場合はスーパーバイザーにIMでヘルプを出して指示を仰いでいる。結果としてお客様を電話口で待たせることなく、的確に対応できるようになったという。

 また、コンタクトセンターでは電話を受けた際に、クロスセリングという手法によってほかの商品を薦めることもある。これもスーパーバイザーがオペレータに「商品○○を薦めてみて」というメッセージを送り指示している。このクロスセリングによって売り上げアップを図ることができたという。このような対応の一つひとつが顧客満足度の向上につながっていくのだそうだ。企業での一般的な利用事例とは異なるものの、電子メールでは不可能な即時性のあるメッセージングによって実現された事例である。